三日月宗近大侵寇の話 ページ7
折れてもいい。
例え、己が歴史を終わらすことになろうと構わない。
本丸に、二度と帰れずとも。
「本丸を守れ。そして、主を」
花々が咲き誇るは京都、椿寺。
晴れ渡る空。四季折々の花が咲くここには、花の香りも、陽の暖かさもない。ここに本当などありはしない。
「三日月さん!」
可愛らしく笑う童も。
「三日月よ」
共に語らう友も。
「三日月宗近!」
あの日置いてきた仲間たちも。
「三日月」
今代の主も。
喪うには情が移りすぎた。
何度も何度も同じ季節を巡ろうと、同じように変わる本丸を見守ろうと、物語の結末は変わらなかった。
崩れゆく本丸。折れた鋼の欠片。目の前を染める血の色。人気の無いこの廃屋に唯一遺った主の遺体。
ああ、覚えてるとも。忘れはしない。忘れられないから、こうして何度も時を巡る。
そのうち、数えるのを辞めた。
折れるには良い日だ。
覚悟はとうの昔に決めている。
「未来は、わからない」
「だが、俺がいなくとも時は進む」
たった一振であの惨劇を起こさないのであれば安いものだ。
不思議と、心は安らかだった。
ただ、一つ。心残りがあるとすれば。
「主に会いたい」
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作者名:零磨 | 作成日時:2022年6月24日 21時