最期の話2 ページ18
「この本丸の審神者が死亡しました」
堅苦しいスーツを着て面布をした男が淡々とそう告げる。
ざわめきが広がる。どういう事だと掴みかかる男士もいた。
掴みかかられてもなお、その男は淡々と告げた。
「審神者定例会議の場に時間遡行軍が押し入り、そこにいた審神者、数十名の死亡が確認されました。この本丸には一週間後、新たな審神者が配属されます。葬式は翌々日執り行いますので、参加する刀剣男士はこの名簿に名を書いてくださいませ。では私はこれにて失礼します」
名簿を押し付け、男士の手を振り払い、役員は去っていった。
渡された名簿を近くにいた安定に押し付ける。
「ごめん、これよろしく」
安定の制止の声が聞こえたが、無視して走り出す。
主が、死んだ？
「私、清光に看取ってもらうんだ！まあ、まだまだ先の話だけどね！長寿の記録でギネス載るんだから！」
「はは、」
うそつき。
涙が溢れる。
主が死んだ実感はあった。主との繋がりがぷつりと切れた感覚があった。他の刀剣男士は分からなかったようだけど。主の手で選ばれた俺だからこそ分かった。分かってしまった。
それでも信じたくなくて、調子悪いのかななんて自分を誤魔化して。
でも
「死んじゃった、のかあ」
もう、愛して貰えない。愛しているのに、愛せない。
いやだ、嫌だ。感情が爆発している様に涙は止まらない。今の俺可愛くない。可愛くない俺ですら愛してくれる主は、もう居ない。主のいない世界、耐えられない。それなら、いっそ
変えて、しまおうか。
ハッとする。今自分は何を考えた。
心の中で誰かが囁く。
歴史を、変えてしまえばいい。
ダメだ、そんなの。今まで俺たちが、主がしてきた事を否定してしまう。何のために、戦ってきた。何のために、仲間の元主を見殺しにした、何のために、沖田くんを見殺しにした。
それでは憎き時間遡行軍と変わらない。
そう思っているはずなのに、囁く声は止まらない。
変えろ、変えてしまえ。変えるのがそんなに怖いのなら、
お前が審神者の代わりに死ねばいい
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作者名：零磨 | 作成日時：2022年6月24日 21時
