本丸怖い話2 ページ15
あれは、この本丸の初期刀。加州清光だ。目を伏せながらそう語った。不幸な事故だったという。薬研が避けた大太刀の一撃が加州清光の首を薙いだのだ。一撃だった。加州清光は戦場で散ってしまった。審神者は深く悲しみ、一ヶ月ほど寝込んだという。しかし、ある時ぴたりと審神者の涙は止んだ。あまりにも突然の変わりように、薬研は思わずどうしたんだと聞いてしまったそうだ。そうすると、審神者はこう語った。加州が、夢で会いに来てくれるようになったのだと。
真相はわからない。ただ、本丸で一番そういったことに詳しいにっかり青江と石切丸に話を聞いたところ、審神者の想いの強さが再び、加州の魂を呼び寄せたのではないかと。しかし、肉体や本体はもう砕けているため、いわゆる思念体として夢に現れるのではないかと。審神者は泣いて喜んだ。あれは私の加州で間違い無かったのだと。また会えたと。
それで終わればあんな札などいらない。つまりは、事が起こってしまったのだ。審神者が再び不調を訴え出した。薬研本刃が見れど、政府の医者が見れど原因は分からなかった。日に日に審神者の顔色は悪くなり、そして_____。目が、赤くなっていった。幾度も見たことのある、でも最近は見ていない、鮮烈な赤色。それが、加州清光の瞳の色であることに気づいたのは誰が初めだったろう？そうして、この体調の悪さが加州清光の影響とわかった時から、夜な夜な本丸を動き回る首元のマフラーを押さえ、片手に刀を携えた加州清光が度々目撃された。そしてそれが日に日に審神者の部屋に近づいていることも同時にわかってしまった。このままでは、審神者の身に危険が及ぶと考えた刀剣男士達は策はないものかと考え、一つの策を絞り出す。幾度か実験を重ねたところ、この加州清光についてわかった事がいくつかあったのだ。それは、この加州清光は"目が見えていない"ということと、審神者がよく過ごしている部屋をスタート地点として毎夜出発し、徘徊するということ。彼は審神者を探している、審神者がよくいる部屋から現れるのは彼の記憶から来る物だろう。目が見えない理由はわからないが。つまり策はこうである。審神者の依代を審神者がよく過ごすいくつかの部屋に置く。そこに加州清光は現れ、審神者の依代を審神者本人と"錯覚"させる。そして部屋の外には開かずの札を貼り、外には出させない。
この策が功をなし、加州清光を札の部屋に隔離することに成功した、というわけである。
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作者名：零磨 | 作成日時：2022年6月24日 21時
