魔女ヒーローは怪人人間を倒すのか ページ1
自身の胸あたりにわずかな熱と重みが落ちて目が開いた。見やれば、いつの間にか眠りに落ちた彼女が無防備にも自身の胸まで頭を預けている。はあと思わず、溜息がもれでたのは何に対してか。
「(何回か抜け出そうとしてたけど、こいつ力無ぇし魔女なのに魔法つかわねえ。髪色もやっぱり変だし‥‥でも)」
空いた手をぐっぐっと何回か握ってみる。完治までとはいかないが幾分か動かすのが楽だった。あの謎の緑の光のせいだろう、それにセーラーウィッチかと尋ねたときの慌てっぷり。間違いなくこいつはS級ヒーローのセーラーウィッチだ。でも。
「(本当に俺のことを知らない)」
すうすうと子供のように眠る、白い頬に指を滑らせようとして直前で手が止まった。なぜかは分からないが、このまま触るのはと思った。
「‥‥」
次にこんなことを考えている自分になんとなく嫌気が差して、腰から手を外してそのまま、またソファへ寝かせる。起きる様子はない。彼女の肩にかけられた上着がそのまま掛け布団になる。これで冷えないだろう。
というかなぜ起きない。本当にS級ヒーローかこいつ。
「んん‥‥」
「!」
思わずびくっと肩が跳ねた。目覚めたのかと思ったが、やはり少し肌寒いのか、かけられた上着を引き込むようにして体を丸めただけだった。そのまま身じろぎして、またすうすう寝息をたてる。
こうしてみると小さいし、細いし筋肉もそんなになくやわっこい。こんなやつが本当に怪人と戦ってるのか?こんなやつ押さえつけたらもう抵抗できないだろうし、今まで生きていたのが奇跡なくらいで、他の怪人に簡単に手籠めにされちまうんじゃないのか?
「‥‥ッチ」
苛々する。
なにに苛立つのか分からなくて、余計に腹が立つ。ガシガシ頭をかいて踵を返す。
「(まあとりあえず杖がないならこいつは敵じゃねーってことだ)」
ならべつに。今倒す必要はない。
こいつも俺のことを知らないようだし、こいつに俺を倒す気もないようだし、杖がないなら脅威にもならないはずだ。
「すぐ戻る」
返事なんて来ないし、言葉をかける必要だってなかったのにそう声をかけて部屋を後にした。苛々する、苛々する、苛々する。余計なことを考えている暇はない。とにかくヒーローを。ヒーローを倒さなければ。
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雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください!楽しみにしてます (2023年1月25日 0時) (レス) @page7 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
担々麺(プロフ) - この小説とんでもなく好きです。無理しないように頑張ってください! (2023年1月17日 19時) (レス) id: d8afbb42f9 (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - あぽろさん» お返事が遅くなり申し訳ないです…!嬉しいお言葉ありがとうございます…!のろのろで申し訳ないですが、よろしければごゆっくりお楽しみくださいませ! (2022年12月11日 22時) (レス) id: d579179d52 (このIDを非表示/違反報告)
あぽろ(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです🥰🥰ワンパンマンに最近再熱したのでこんなにも面白い作品に出会えるなんてとってもラッキーです!!更新のほう作者さんの無理のないよう頑張ってください!! (2022年11月6日 20時) (レス) @page4 id: ebcad6c5f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千歳 | 作成日時:2022年2月20日 23時