ぼく11歳、姉16歳 ページ9
母が再婚して、家族が増えたおかげで俺はクラブ活動に参加することができるようになった。母さんと2人暮らしのときは、洗濯物の取り込みやら家事の一端を俺が担わなければならなかったので、参加することができなかったのだ。
新しくできた義姉はいつも必要以上に、俺を構う。
夕飯を多めにしてくれたりだとか、宿題を教えてくれたりだとか。俺はもともと一人っ子なので、姉弟がどういう距離感で過ごすのか知らないが、少なくもこんなに近くはないだろうと思う。
「ほんっっま姉ちゃんうざいわ！」
「‥‥優馬のところも姉ちゃんいるんや」
授業の空き時間の教室で粗雑に机の上に座るのは、そこそこ話す仲の優馬だった。優馬はなにかに苛立った様子で、足を投げ出している。
「おん、ほんまにうざいで。ちょっと漫画借りたり、ゲーム借りたりしただけで怒んねん。ケチやしずるいし、やから彼氏できんねんやんか」
「そうなん？姉ちゃんってそういうので怒るんや」
「あれ。ショッピんとこも姉ちゃんおったっけ？」
「うん、まあ、親が再婚したから」
こいつの良いところは良くも悪くも物事を素直に受け止めるところと、全く考えもなしに発言をするところだ。深く考えず付き合えるのが、こいつの良いところである。
「へえ、そうなんや。ええやん、新しい父ちゃん。俺ん家のパチンコ父ちゃんも新しくしてほしいわ」
「(安易すぎる)」
「ショッピも気をつけた方がええで〜〜〜〜姉ちゃんの物ちょっと触りようものなら、アホみたいに怒鳴られんで。ちょっと早く生まれただけで偉いんか？ったく」
ふんとつまらなそうに鼻を鳴らすと同時、次の授業の先生が教室に現れて話は切り上げられた。優馬の話を頭の中で反芻する。あの人が怒鳴るところは想像できないけれど、怒ったりするんだろうか。
「(‥‥すこし興味あるな)」
例えばなにをすれば怒るんだろう。
俺の歳で、どこまでの悪戯なら許されるだろう。
「(勝手に物を触る、姉のものを使う、姉のものを食べる)」
この辺か？
「ほんならショッピ、この問題解いてくれるか？」
とんとんとシャープペンシルでノートの端をたたいていると、ふいに問題を黒板に書いていた先生から声をかけられた。
「はい」
思考を切り上げて、黒板の前に立つ。指先がチョークで汚れるのであまり好きではないのだけれど、小さく息を吐いて、チョークをつまんだ。
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作者名：千歳 | 作成日時：2020年3月29日 16時
