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お父さんが単身赴任で家を出てしまってから、わたしはいっそう力をいれて努力した。高校での勉学はもちろん、部活や家での家事も手を抜かずにお母さんを助けた。
お兄ちゃんにも、前みたいに戻れるように一縷の望みをかけて以前のように明るく話しかけたり、お兄ちゃんの分のお菓子をとっておいて渡してみたり、なんでもやってみた。
けれど。
「お兄ちゃん忙しいんよ」
高校を卒業して、大学生になったお兄ちゃんはわたしに構う時間はないようで、軽くあしらってすり抜けて行ってしまう。
変わらず、くるくるといつも違う女の人が部屋を出入りしている。
「はぁ‥‥」
昨日はしつこいと軽く怒られてしまった。
買い物袋を持ちながら、軽くため息をついてとぼとぼ帰路につく。テレビで見たお菓子のレシピを試したら上手くできたので、お兄ちゃんにも、と渡そうとしたのだ。
けれどお兄ちゃんは興味なさげにそれに首を振って、でも、と眉をさげるわたしに「あんまりしつこいと怒るで」と叱りつけた。
でも、でも。
お父さんがいない今、お兄ちゃんの協力は不可欠だ。お兄ちゃんが、いないと。
「(女の人と会うのも、もう、やめて、ほしいな)」
ぼんやりとそんなことを考えて、はっとしながらすぐに打ち消した。そんなの、会うだけならお兄ちゃんの自由だ。お付き合いするのもキスをするのも、あれ、をするのも。
「(なに考えてるんだろ、わたし)」
そう、家。お家でするのを止めてほしいだけ。そうすれば、お母さんに見つかる心配もなくなるし、私も見なくて、済むし。
でも。そうしたら。
別の場所で、同じことをするのだろう。
「‥‥」
「あれ、もしかしてAちゃん？」
「！」
ぽんと軽く叩かれた肩に、びくっと大袈裟に反応してしまう。肩をたたいたその人もわっと小さく声をあげて、驚いた。
「ごめん、驚かせた？」
「あ、ろぼろ、くん」
私の肩を叩いたのはお兄ちゃんの友達だった。ここ最近はみないけれど、小学校のころはよく遊んでくれたご近所さんだ。
「あ、じゃない、ロボロさん」
「えーなんで？ロボロくんでもええよ？」
「でも‥‥」
「急にそんなん寂しいやん。ね？」
「‥‥うん」
「ほんまに久しぶりやなぁ。今はもう高校生やんな」
「うん。もう３年生になるよ」
「そっかぁ、俺も歳とるわけやな」
あははと楽しげに笑うロボロくんは、昔と変わらずとても優しかった。なんだか嬉しくて、懐かしくて、私の頬もゆるむ。
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千歳(プロフ) - めぅか。さん» 初めまして！はい、全くもって無関係です。そちらを意識した訳では無くこの単語の意味合いを持たせたお話のため付けられたタイトルです。ご理解賜りますようお願い申し上げます。最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2020年4月9日 21時) (
レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - ゆうかさん» 私もしんどい思いをしながら書いておりました…自分で書いておいて「救いはないんですか！！」って感じです…一緒に見守ってくださりありがとうございました！私もrbrさんすごく好青年に書けたな…としたり顔してます！ (2020年4月9日 21時) (レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - まもやろたおさん» ありがとうございます・・なんとか完結に漕ぎ着けました・・・！ (2020年4月9日 21時) (レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
めぅか。 - あの、これのタイトルってま/ふ/ま/ふ/様の曲と同じではありませんか？不快な思いをされる方もいらっしゃるのでは無いでしょうか？作者様はそういうつもりがないのは重々承知しておりますが一応言わせていただいときます。作品としてはとっっっっても好きです！ (2020年4月8日 22時) (レス) id: aacdd32f14 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - しんどい……(；；)こういう自己犠牲だったり屑だったりするお話好きなので、辛いけど最高でした……登場人物の感情がまっすぐに伝わってきて、凄く感情移入出来ました。すごい……完結おめでとうございます、お疲れ様でした！！(個人的にはrbrさんが凄い好きでした) (2020年3月30日 19時) (レス) id: 8749d17fa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千歳 | 作成日時：2019年9月30日 0時
