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「なに話したんよ」
女は様子の変わった俺に気がつかないままに、楽しげに話を続ける。
「ふつーのことだよ？はじめましてー、妹さん？みたいな？ちょっとびっくりしてて、でもそうだっていうから、鬱くんの彼女です〜みたいな」
「‥‥それで、なんて？」
「知ってます、って。してるのやっぱり気づかれてたんじゃぁんってなってぇ‥‥恥ずかしいよ、もう」
くすくす笑うたび、女の髪が揺れてすこしだけ汗を含んだ甘い香りが、鼻をくすぐる。いつもは俺を溺れさせてくれるそれが、ひどくひどく気持ちが悪い。
「また遊びにくるから仲良くしてねって言ったら、はいって。可愛いねー。わたし絶対仲良くなれると思」
まだなにか話す女の顔に、ベッドの下に転がっていた制服のブラウスを放り投げる。きゃっと短く悲鳴をあげて、なにをするのか憤る女に俺は冷静に言い放った。
「もう帰って」
「え？」
「悪いけど、今日は親帰ってくんの早いねん」
「あ‥‥そう、なんだ？」
そこで女はようやく俺の豹変ぶりに気がついたようで、突発に沸いた怒りを引っ込めて同じくベッドの下に落ちていたプリーツスカートをおそるおそる拾い上げる。
着替え始める女を横目で眺めて、女の学生鞄を手に持った。
さっさと自身も身支度を整えて、着替え終わった女に鞄を押し付ける。受け取ったかも確認しないまま、手を離して扉を開けた。
女が慌てたように声をあげる。
「ま、まってよ。髪の毛、直したいし」
「鉢合わせてもええの？」
察して早く出て行け、という裏の言葉にはたして気が付くやら。女は一瞬だけひるんだように瞳を歪めたが、すぐにすうっと息を吸ってきっと俺を睨みつけた。
「っ‥‥わ、私は別にいいよ！鬱くんとのこと、本気だもん！」
ぐしゃぐしゃな髪と、真っ赤は表情で。自身の鞄を床に投げ捨てて、俺の腕にしがみつく。
「わたし鬱くんと、結婚したいって思ってるの！それくらい好きなの！だから、家族と鉢合わせてもいいよ！鬱くんの彼女ですってちゃんと挨拶して‥‥」
「ああ、そうやったん」
なんの感情も乗らない、機械のような平坦な声音。
「うつ、くん‥‥？」
俺の顔を覗き込んだ女が、青い顔をして後ずさる。自身の声なのに、なんちゅう冷たい声じゃ、と寒気がした。
「俺は、おまえのことそこまで想ったことないけど」
約束を決めた。
全員平等に、誰ひとりにだって、特別なんて唯一無二なんて、決めないで。
どうせ、誰だって一緒なのだから。
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千歳(プロフ) - めぅか。さん» 初めまして！はい、全くもって無関係です。そちらを意識した訳では無くこの単語の意味合いを持たせたお話のため付けられたタイトルです。ご理解賜りますようお願い申し上げます。最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2020年4月9日 21時) (
レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - ゆうかさん» 私もしんどい思いをしながら書いておりました…自分で書いておいて「救いはないんですか！！」って感じです…一緒に見守ってくださりありがとうございました！私もrbrさんすごく好青年に書けたな…としたり顔してます！ (2020年4月9日 21時) (レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - まもやろたおさん» ありがとうございます・・なんとか完結に漕ぎ着けました・・・！ (2020年4月9日 21時) (レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
めぅか。 - あの、これのタイトルってま/ふ/ま/ふ/様の曲と同じではありませんか？不快な思いをされる方もいらっしゃるのでは無いでしょうか？作者様はそういうつもりがないのは重々承知しておりますが一応言わせていただいときます。作品としてはとっっっっても好きです！ (2020年4月8日 22時) (レス) id: aacdd32f14 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - しんどい……(；；)こういう自己犠牲だったり屑だったりするお話好きなので、辛いけど最高でした……登場人物の感情がまっすぐに伝わってきて、凄く感情移入出来ました。すごい……完結おめでとうございます、お疲れ様でした！！(個人的にはrbrさんが凄い好きでした) (2020年3月30日 19時) (レス) id: 8749d17fa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千歳 | 作成日時：2019年9月30日 0時
