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「いやっ…！私こそ！立ち聞き見たいなことして…！」
「いや、誰でも通るような場所で大声で話してたんだ。聞くなって方が無理がある」
「……」
轟くんの表情に影が落ちる。あ、嫌だな。わたし、この顔を知っている。お母さん、が。
自身の下ろした手がぐ、っとジャージを握り、皺をつくる。私になにが言えるんだろう。なにを偉そうに、私よりも強くてかっこいい轟くんに、私なんかが一体なにを、。
「あの、」
でも、
「‥あのね、轟くんのおかげで私、自分の個性すこし面白いなって、好きになれるかもしれないなって思ったんだよね」
君の力じゃないか、と轟くんへ激昂した緑谷くん、今までかたくなに使わなかった炎をまるで、解き放つようにして使った轟くん。
上へ上へ上へ。もっともっとこの先へ。
引っ張り上げられるような、突き上げられるような気持ちを覚えたのはあの会場で私だけじゃなかったと思う。
「轟くんがこの前、私の個性の印象が違ったって言ってくれたの。あれで少し見方とか考え方とか、工夫してみたりとかして。まだ、ぜんぜん及ばないんだけど」
「‥‥」
「私、まだ頑張ろうって、思って‥‥その‥‥」
言葉がしぼんで、沈黙が2人の間に降りた。なにを言いたいのかわからなくなってしまった。
ただ、私の個性に対する別の視点ようなものをくれた轟くんに試合お疲れ様と、少しの感謝を伝えたいだけだったのに。
「‥‥」
落ち着いて。
ゆっくり息を吸う。
「‥‥轟くんの個性もまだまだ力とか可能性とか、いっぱいあるね。まだ弱い私にも、今もうすっごく強い轟くんにも。みんなにも、もちろん」
うれしい。私のこの個性はもっともっと私の知らない一面があるに違いない。思わず口元がゆるんで、試合前だというのに私はふにゃりと表情をゆるめてしまう。
「たのしみだね、みんなどんなヒーローになれるかな」
轟くんはきょとんとした表情で、私を見つめていた。
「‥‥守沢は」
「？」
ふっと轟くんが力を抜いたようにして笑う。
「守沢は、優しいヒーローになるんだろうな」
「‥‥え、あ」
彼の強張っていた肩がおりるのが見える。私はといえば偉そうなことを言ってしまって、轟くんが怒ってしまったのかとおろおろと狼狽えてしまった。
「次、見てるから頑張れよ」
轟くんが持ち上げたペットボトルがちゃぷんと音をたてる。表情が少しだけ柔らかくなって、目じりがおりているのが見えた。
「うん！」
私も踵を返して、ぐっと足を踏み込んだ。
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千歳(プロフ) - ナモミールさん» ひえー！ありがとうございます！うんうん考えながら書いているので嬉しいです！尾白くんはもう主ちゃんちょっと気になってる感じですね、たぶんUSJ辺りからです。どうなるかどうか一緒に見守ってください！ありがとうございました！ (2020年3月27日 23時) (
レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
ナモミール(プロフ) - 凄く面白いです!あまり尾白君の出番がある作品はほぼ無いので凄く好みです…!個人的には夢主ちゃんのお相手になったら…(←図々しくてすみません) (2020年3月24日 1時) (レス) id: fc525afbc4 (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - orangeさん» ありがとうございます！私得だけだと思って書いたんですが、楽しんで頂けてとても嬉しいです。これからもよろしくお願い致します！ (2019年8月22日 16時) (レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
orange(プロフ) - 続編おめでとうございますー！一番最初の方にオマケ（？）みたいな感じで載っていたお話、とっても面白かったです！更新応援していますー！ (2019年8月22日 9時) (レス) id: 59138960e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千歳 | 作成日時：2019年8月4日 21時
