散りばめた赤に触れる ページ20
さっさと席に戻れと額を指で弾かれて、後ろから「コラー！」とスタッフさんに追い討れて私はばたばたと裏方の廊下を走っていた。
たったったっ、と私の足は兎のように跳ねていく。走るたびに嬉しい気持ちが足元で弾けて、胸の内を満たしていく。
「(って、浮かれてる場合じゃないや･･･梅雨ちゃんが心配してるかも、はやく観客席に戻らなきゃ)」
とはいえ初めて訪れた大きな会場だ、道に迷わないようにきょろきょろと辺りを見回しながら小走りに進む。うん、たしかこの角を曲がれば。
「最高傑作なんだぞ！」
「！？」
地が震えるような怒号が角から聞こえる。曲がり角の向こうで誰かが言い合いをしているようだった。大変だ、スタッフさんを呼んできた方がいいだろうか。
きゅ、
靴が滑る音がして、曲がり角から人影が現れる。狼狽えていた表情は固まって、声は喉の奥へ落ちた。見たことも無い怖い顔をした轟くんが、ぱちりと私と対峙する。
「！ 守沢････」
「、え、あ、轟く」
「････」
轟くんは一瞬だけ目を見開いて驚いたような表情を見せたが、すぐに視線を逸らすと私の横をすり抜けさっさと歩いて行ってしまった。かける言葉もなく、その背中を見送る。
「(どういうこと？一体、なにが)」
「む？君は」
視界の縁に、紅蓮の炎が散らばって私の思考を奪う。首元から赤く、力強い炎が吹き出したその人はプロヒーローのエンデヴァーだ。そう、頭の片隅で理解した。
けれどそれ以上に。
「ぁ、」
「焦凍と同じクラスの生徒だな、たしか守沢････？どうした、顔色が」
すっ、と親切心でエンデヴァーさんが腕を私へと伸ばす。炎が、私へ近付いてくる。
「！ 嫌っ！」
ほとんど反射で私はエンデヴァーさんの手を払い除けた。驚いて目を丸くするエンデヴァーさんに構ってられず、その場から転がるように逃げ出す。
後ろからエンデヴァーさんが呼び止める声がしたが、構っていられない。絡まりもつれそうになる足を叱咤しながら、必死に観客席へと戻った。
「(なんで、ちがう、あれは大丈夫なの。あれは、エンデヴァー、さんの、)」
分かっているのに体が言うことを聞かない。震える足、浮かぶ涙。きっと、顔は真っ青で。
たすけて、こわい、息が、
「Aちゃん！」
無我夢中で走る私の腰に突然なにかが巻きついて、足は止まった。はっと我に返って声の方を見れば梅雨ちゃんが舌を私へ巻きつけて進行を止めたようだった。
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千歳(プロフ) - ナモミールさん» ひえー！ありがとうございます！うんうん考えながら書いているので嬉しいです！尾白くんはもう主ちゃんちょっと気になってる感じですね、たぶんUSJ辺りからです。どうなるかどうか一緒に見守ってください！ありがとうございました！ (2020年3月27日 23時) (
レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
ナモミール(プロフ) - 凄く面白いです!あまり尾白君の出番がある作品はほぼ無いので凄く好みです…!個人的には夢主ちゃんのお相手になったら…(←図々しくてすみません) (2020年3月24日 1時) (レス) id: fc525afbc4 (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - orangeさん» ありがとうございます！私得だけだと思って書いたんですが、楽しんで頂けてとても嬉しいです。これからもよろしくお願い致します！ (2019年8月22日 16時) (レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
orange(プロフ) - 続編おめでとうございますー！一番最初の方にオマケ（？）みたいな感じで載っていたお話、とっても面白かったです！更新応援していますー！ (2019年8月22日 9時) (レス) id: 59138960e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千歳 | 作成日時：2019年8月4日 21時
