2 ページ2
「･･･なんだ、それ」
「え」
そのまま行ってしまうかと思ったけれど、轟くんは私の手元にちらりと視線をやって口を開いた。まさか話しかけてくれるとは思わず、何となく慌ててしまう。
「あ、えっと、みんなが敵に対峙したときの戦い方とか、どう個性を使ったとかのメモ･･･といっても、女子のだけなんだけど････」
「ふーん････？」
「私、敵に対峙したとき一緒にいた尾白くんに迷惑かけちゃったし、色々と反省点もあるから････参考にならないかな、と思って････」
「････」
轟くんは私のノートに視線を滑らせながら、トン、と長い人差し指をノートの面へ置く。きょとんと見上げると、まるで独り言みたいに、彼の口が動いた。
「あくまで、俺の印象」
「え･･･？」
「守沢の個性を授業で見たときと、食堂で見たとき、全然印象が違った」
「食堂って･･･飯田くんのとき？」
「ああ」
「印象が違うって････」
どういう？
そこでぱちりと轟くんと視線が合う。思わず、出かけていた言葉をひゅ、と飲み込んでしまった。轟くんのアイスブルーの瞳が、私を写す。
「と、どろきくん、どうして、おしえてくれるの････？」
「･････････べつに」
轟くんは自分で口を片手で軽く押さえて、自身の気持ちを探るように言葉を紡ぐ。
「興味が、すこし、湧いたから、？」
「そ、そっか･････？」
「･･････････････悪ぃ、なんでもない」
くる、と踵を返して、轟くんはさっさと教室を出て行ってしまう。そこまで背中を見送って、私はようやく意識して息をふ、と吐いた。何だか緊張した。
「(印象が････ちがう････)」
轟くんの氷結を止めた時と飯田くんのために、非常口の看板まで道を作った時。形は違えど、どちらも同じ、私のシールド。
もっともっと、使い方がある？
例えば、道を作ること、入試試験のロボットの間接を壊したこと。あれは打上先生のアイディアだったけれど、そこを認められて私はここに入学することが出来た。
今度は、私自身の力で。
「(例えばもっと、繊細に形を変えられたら？)」
頭のなかでハート形を思い浮かべ、シールドを手のひらのなかに作る。けれどできたのは歪な形で、コロンと私の手の中に転がった。
「(これは････練習しないと････)」
むん。と気合いを入れ直して、私は心配した梅雨ちゃんが呼びに来てくれるまで手のひらにハート形のシールドを作るのに没頭していた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 127人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千歳(プロフ) - ナモミールさん» ひえー！ありがとうございます！うんうん考えながら書いているので嬉しいです！尾白くんはもう主ちゃんちょっと気になってる感じですね、たぶんUSJ辺りからです。どうなるかどうか一緒に見守ってください！ありがとうございました！ (2020年3月27日 23時) (
レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
ナモミール(プロフ) - 凄く面白いです!あまり尾白君の出番がある作品はほぼ無いので凄く好みです…!個人的には夢主ちゃんのお相手になったら…(←図々しくてすみません) (2020年3月24日 1時) (レス) id: fc525afbc4 (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - orangeさん» ありがとうございます！私得だけだと思って書いたんですが、楽しんで頂けてとても嬉しいです。これからもよろしくお願い致します！ (2019年8月22日 16時) (レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
orange(プロフ) - 続編おめでとうございますー！一番最初の方にオマケ（？）みたいな感じで載っていたお話、とっても面白かったです！更新応援していますー！ (2019年8月22日 9時) (レス) id: 59138960e1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：千歳 | 作成日時：2019年8月4日 21時
