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しらっとした顔で田噛さんはそれを流すと、素知らぬ表情のまま私の隣へ並び、軽くぽんと背中を叩く。小声で「落ち着け」とささやかれた。
「改めてはじめまして、だな。私は肋角、ここにいる田噛や斬島たちの上司にあたる。君の･･････名前を教えてくれるか？」
目の前の男の人･･･肋角さんも穏やかな口調で話してくれる。私は両手を胸元へ集めて、なんとか自身を落ち着かせ恐る恐る口を開いた。
「A、です」
「‥‥‥‥そうか、よろしく頼む。私のことは肋角で構わない」
「は、はい」
「さてA、君は自分のことをどれだけわかっている？」
くっと腰を曲げ、肋角さんは私の瞳を覗き込んだ。紅蓮のなかに薄桃色の瞳をした私が写っている。肋角さんからされた質問の回答を探して、するとなにか引っかかるような違和感が脳裏をかすめたが、そのまま靄となって消えた。
「‥‥え、っと」
またうつむいて言葉を詰まらせてしまう。
そんな私の背中にそっと指先が触れて、震えが止まる。はっと顔を上げれば、私の隣に並んでいた田噛さんはこちらを見ずに口をひらいた。
「確認しましたが、俺達のことはわかるようです。ただここに来るまでの記憶はごっそり抜けていました」
「‥‥ふむ、そうか。ならば説明しよう。ここは獄都という都市で、私たちは鬼‥‥獄卒だ。私たちの職務は迷える魂を冥府へと導くこと‥‥君はその職の見習いとしてここにやってきた。わかるか？」
「私がその‥‥皆さんと同じ仕事をするってこと、ですか」
「そうだ。ここでの生活や任務に関しては、斬島を君の教育係としてつけるから彼から教わるように。少しでも早くここでの生活に慣れ、一人前になれるよう頑張るんだ」
「あ、は、はい！」
ぽんぽん、と優しく両肩をたたかれて私はわたわたと慌てながら、何度も縦に首を振った。その様子がよっぽど可笑しかったのだろう、肋角さんはくすりと小さく笑ってから、田噛さんと退室するように指示する。
「いくぞ」
「あ、は、はい！失礼しました！」
古い木の鳴る音とともに、重い木の扉は閉じる。ようやく緊張から解き放たれ、ふーっと長く息を吐く私を田噛さんはさっさと踵を返し置いて行く。
「えった、たがみさん！」
「なんだよ」
「どこ行くんですか」
「‥‥」
雛鳥のように後をついてくる私を、ちらっと一瞥して口元だけでくすっと笑う。肋角さんにもさっき同じように笑われた気がする。
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眠い羊ちゃん(プロフ) - お久しぶりです！続き待っていました！😭ありがとうございます！！！ (2023年1月26日 20時) (
レス) @page14 id: 0bb018741b (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - sakiさん» こんにちは！前作よりお読みいただきありがとうございます…！そんな嬉しいお言葉…励みになります…！！どうぞ一緒に楽しんでいってください！ (2022年2月2日 9時) (レス) id: c5af6075e0 (このIDを非表示/違反報告)
saki - 前作から読んでます！なんかもう……ずっと面白すぎて読み返してます……！更新、無理しない程度に頑張ってください！ (2022年1月31日 1時) (レス) @page12 id: 0fd44e5e71 (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - hona816さん» 前作からお読みいただきありがとうございます・・！リアル忙しく更新お返事共に鈍レスで申し訳ございません。細々とやって参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。 (2021年4月18日 20時) (レス) id: d22da3f209 (このIDを非表示/違反報告)
hona816(プロフ) - 前作も読みました！つい最近5話を読みましたけど、やっぱり面白いです！（語彙力喪失）これからも頑張ってください！ (2021年1月12日 19時) (レス) id: b73c4cc110 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千歳 | 作成日時：2020年7月26日 4時
