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「お前、起きたのな」
背中を押されたままなので、見知らぬ廊下だけれど何とか導かれるままに歩く。角を曲がり、先ほどの男の人の姿が見えなくなると、ぼそりと田噛さんがつぶやいた。
「え？あ、えっと、はい」
「ふーん。小汚かったのが少しはマシになったな」
「こぎ！？」
「はあ。お前、俺のこと覚えてんのか」
「お、覚えてますよ‥‥たがみさん、ですよね？」
「どこまで覚えてる」
「えっ‥‥えっと、た、田噛さんたちのことは分かるんですけど‥‥」
探るように口を開いたところで、田噛さんは私の背を押すのをやめて横に並ぶ。私の声がなんとなく小さくなったからだろう。表情を確かめるように、ひょっと覗き込んできた。
「わかるけど？」
「‥‥あの、私どうしてここに来たんです、っけ？」
誤魔化すようにへらっと笑うと、田噛さんは目を細めて私を見つめ返した。痛い沈黙が私たちの間に流れる。
「‥‥‥どうしてって、お前忘れたのかよ」
「うっ、その、気が付いたらここのベッドに寝ていまして‥‥」
「‥‥」
「？？田噛さん？」
「‥‥ほら、ここが肋角さんの部屋だ」
なんだか様子のおかしい田噛さんを今度は私が顔を覗き込もうとすれば、それを振り切るように田噛さんは足を止めた。彼の視線の先には、貫禄のある重厚な木の扉が鎮座している。
「いくぞ」
「え、あ」
「肋角さん、田噛です」
私の心の準備のことなんて田噛さんは一切気にしていないのだろう。さっさとノックして扉を開けてしまう。内心「ひええ」と悲鳴を上げながらも、慌てて田噛さんの背を追った。
「ん？田噛、帰ったのか」
思わず、びくっと肩が跳ねた。低く重い声が、突如わたしの耳を滑り足を止めさせる。田噛さんの背中の向こうで、紅蓮の瞳が私を捕えた。
「おや、目が覚めたのか」
「はい。ここへ来ようとしていたようだったので、連れてきました」
「斬島が連れてくるかと思ったが‥‥今日は非番だったろう？」
「さあ、見ませんでしたが」
「そうか。なにか用だったか？」
ギ、と椅子が軋み、その人が立ちあげる。私はおろか田噛さんの身長をもゆうに超えて、その人はゆっくりと私の元へと歩み寄った。捕食者に追い詰められた小動物の気分だ、思わず身が竦む。
「あ、あの‥‥すみませんでした‥‥」
「？なにがだ？」
「ふ、」
目の前で首をかしげる巨体にした私の命乞いに、田噛さんが思わずというように吹き出したのが視界の端に見えて、涙目で睨みつけた。
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眠い羊ちゃん(プロフ) - お久しぶりです！続き待っていました！😭ありがとうございます！！！ (2023年1月26日 20時) (
レス) @page14 id: 0bb018741b (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - sakiさん» こんにちは！前作よりお読みいただきありがとうございます…！そんな嬉しいお言葉…励みになります…！！どうぞ一緒に楽しんでいってください！ (2022年2月2日 9時) (レス) id: c5af6075e0 (このIDを非表示/違反報告)
saki - 前作から読んでます！なんかもう……ずっと面白すぎて読み返してます……！更新、無理しない程度に頑張ってください！ (2022年1月31日 1時) (レス) @page12 id: 0fd44e5e71 (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - hona816さん» 前作からお読みいただきありがとうございます・・！リアル忙しく更新お返事共に鈍レスで申し訳ございません。細々とやって参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。 (2021年4月18日 20時) (レス) id: d22da3f209 (このIDを非表示/違反報告)
hona816(プロフ) - 前作も読みました！つい最近5話を読みましたけど、やっぱり面白いです！（語彙力喪失）これからも頑張ってください！ (2021年1月12日 19時) (レス) id: b73c4cc110 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千歳 | 作成日時：2020年7月26日 4時
