4 ページ5
「おやおや、どうかしたかな」
「あ‥‥すみません、わたしぼーっとしてて‥‥」
「ふふふ、大丈夫。そこまで強くぶつからなかったし、貴方にも怪我はなさそうだ」
その人の瞳は、灰色がかった青だった。きれいだ、こんな毛色の猫も昔見たことがある。わたしの大好きだったgえfja5ws/eg?の家で。
「‥‥？」
「‥‥ああ、いいんだよ。そんなに考え込むことはないからね」
「え？」
するりと白い手袋をした指が、私の目尻を撫でた。する、する、と何度も往復する。なにかを確かめるみたいに、私にその感覚を刷り込ませて、覚えさせられるみたいに。
「あんまりぼんやりしてはいけないよ。ここに慣れるまで、自分で自分を守れるくらいの力がつくまでは、ここの同僚の、皆の言うことを聞きなさい。無闇に耳を傾けて、着いていったりしては駄目。貴方はとても美味しそうだからね」
「‥‥？‥は、い‥」
上手く息ができない。靄がかかったみたいに、考えがまとまらない。
「いい子だね、さあ名前を教えて」
ただただこの人の声だけが、私の中に直接流れ込んでくるようで。
「‥‥A‥‥」
喘ぐように、名前を口にする。
「ふふふ、ぼんやりしては駄目と言ったばかりだろう‥‥？私たち以外に簡単に名前を教えたりしたらいけないよ？」
「え‥‥でも‥‥」
「災籐さん」
その声を聞いた瞬間に、ぴしゃんっと冷水をかけられたように脳内から靄がぱっと晴れた。ぱちぱちと瞬きすれば、今にも唇が触れてしまいそうなくらい至近距離に、端正な顔立ちの男の人がいる。
「ひえ！？えっ！？」
「ふふ、すまないね。少しからかい過ぎた」
ぱっと手が離されて、ふらふらと後ずさると背中がトンと誰かに支えられた。見やれば、眉をしかめさせた橙色の瞳の男の人が呆れ顔で私をみている。ああ、私、この人も知っている。
「肋角のところへ行くんでしょう？彼ならまだ部屋にいる。田噛、案内してあげなさい」
「‥‥はい」
「それじゃあ」
私と男の人ににっこりと微笑みかけ、そのまますたすたと横を通り抜けるともう一切こちらを振り向かなかった。何だったんだ、何だったんだ！？
「はあ、だるい」
「田噛さん‥‥私、これからどうなるんですか‥‥」
「‥‥お前、俺のこと覚えてるんだな」
「え？はあ、まあ」
「ふーん。ま、行くか」
不機嫌な表情が少しだけ和らいだ田噛さんが、ぐいぐいと私の背中を押して、無理やりに私の歩は知らない廊下を進んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
眠い羊ちゃん(プロフ) - お久しぶりです！続き待っていました！😭ありがとうございます！！！ (2023年1月26日 20時) (
レス) @page14 id: 0bb018741b (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - sakiさん» こんにちは！前作よりお読みいただきありがとうございます…！そんな嬉しいお言葉…励みになります…！！どうぞ一緒に楽しんでいってください！ (2022年2月2日 9時) (レス) id: c5af6075e0 (このIDを非表示/違反報告)
saki - 前作から読んでます！なんかもう……ずっと面白すぎて読み返してます……！更新、無理しない程度に頑張ってください！ (2022年1月31日 1時) (レス) @page12 id: 0fd44e5e71 (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - hona816さん» 前作からお読みいただきありがとうございます・・！リアル忙しく更新お返事共に鈍レスで申し訳ございません。細々とやって参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。 (2021年4月18日 20時) (レス) id: d22da3f209 (このIDを非表示/違反報告)
hona816(プロフ) - 前作も読みました！つい最近5話を読みましたけど、やっぱり面白いです！（語彙力喪失）これからも頑張ってください！ (2021年1月12日 19時) (レス) id: b73c4cc110 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：千歳 | 作成日時：2020年7月26日 4時
