彼女が守ったもの ページ19
お願い、お願い欠片よ、息を吹き返して。
切なる願いが闇を揺蕩う。
あの子の体質は特別で特殊でとにかく厄介だった。全てのものを惹きつけ、見え聞こえ、異形があの子を異界へと誘う。
苦労の末にようやく授かった初孫だった。母親には私のこの血は遺伝しなかったが、娘の力がとてつもない物だった。
「この子はとても魅力的な魂をもっている。多くの良いものも悪いものもこの子に魅せられる……けれど、この子自身に力はないから、跳ね返すことが出来ないの」
追い返すことも無視してやり過ごすことも出来ないだろう。歩き、話すようになったらきっとあっという間に異界へと連れ去られるであろうことは明白だった。
「お母さんお願い、Aを助けて」
実娘の願いもあり、なんとかこの子を救えないかと手を尽くしたが、どの霊媒師や呪い師へ尋ねても、渡り歩いても方法は見つからなかった。
「お母さん、Aの様子がおかしいの！」
Aが1歳になった頃、ある日掛かってきた1本の電話に慌てて病院に駆けつける。ベッドの上のAの顔は真っ白で、息もどんどん弱くなっているのが見て取れた。
母親が私にすがりついて、医者も原因が分からないと言うと泣きじゃくっている。それもそうだろう。原因はいま彼女を全身で締めつけているこの蛇なのだから。
「Aちゃん……」
元々は神様だったかもしれない、とてもなく強い蛇だ。
私なんかじゃ祓えない。それにこの蛇は私の力量を分かっていて、Aが息絶えるギリギリの力で全身を締めている。
分かってて遊んでいる。
「お母さんお願い……私この子を失ったらどうしたらいいの……」
私だってそうよ。
どうしたらいいの、どうしたら。
緊迫する病室の廊下を、なにも事情なんて知らない子供たちが駆け抜けていった。楽しげに遊びを相談する声が聞こえる。
「今日は何する？」
「隠れんぼしようよ」
「えーまた？鬼ごっこにしない？」
「……！」
隠れんぼ、鬼ごっこ、
それしかない、もうそれしか。この子の力を隠して目を誤魔化して、どうにか出来るまでせめて。
「少しだけ、この子と2人にしてちょうだい」
「え……？」
「お願い、誰も入れないで」
鬼気迫る勢いで医者もナースも、この子の両親も部屋から追い出す。蛇とこの子とわたし、3人だけになる。
終わり
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眠い羊ちゃん(プロフ) - お久しぶりです！続き待っていました！😭ありがとうございます！！！ (2023年1月26日 20時) (
レス) @page14 id: 0bb018741b (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - sakiさん» こんにちは！前作よりお読みいただきありがとうございます…！そんな嬉しいお言葉…励みになります…！！どうぞ一緒に楽しんでいってください！ (2022年2月2日 9時) (レス) id: c5af6075e0 (このIDを非表示/違反報告)
saki - 前作から読んでます！なんかもう……ずっと面白すぎて読み返してます……！更新、無理しない程度に頑張ってください！ (2022年1月31日 1時) (レス) @page12 id: 0fd44e5e71 (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - hona816さん» 前作からお読みいただきありがとうございます・・！リアル忙しく更新お返事共に鈍レスで申し訳ございません。細々とやって参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。 (2021年4月18日 20時) (レス) id: d22da3f209 (このIDを非表示/違反報告)
hona816(プロフ) - 前作も読みました！つい最近5話を読みましたけど、やっぱり面白いです！（語彙力喪失）これからも頑張ってください！ (2021年1月12日 19時) (レス) id: b73c4cc110 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千歳 | 作成日時：2020年7月26日 4時
