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「いいえ、違わないわ」
二の足を踏んだような態度のAに、ミツバはキッパリと告げた。二人のことを見守っていたからこそ断言出来るのだと。
ある日を境に、土方の自分を見る眼に熱が籠もるようになったことは、とうの昔に気付いていた。そして、ミツバが土方を見れば、やや頬を赤らめて視線を反らすことも。やがて、新しくAが近藤家に居候するようになってからは、近藤ともミツバとも違う、彼女だけに向ける眼差しがあることを知った。それを例えるならば、師の後ろ姿を追い掛ける弟子といった所だろうか。
「十四郎さんにとって、貴方は良いことも悪いことも全て教えてくれる、道標のような人なんじゃないかしら。理想を理想のままで終わらせない。どんな暗い現実だって、いずれは向き合う問題だもの。きっとためになったと思うわ」
だから、目標となるAが土方の側にいるだけで、心の支えになれるはず、と。そう力強く説得する。
実際それは、ミツバにとっても同じこと。春の訪れと共にやって来た女の侍は、病弱で刀すら持てないミツバにとって、憧れの存在だった。そんなAが活躍しているのを聞けば、ミツバも蔵場と歩む新たな人生を幸せに生きられるーーそんな期待があった。
「道標、か。そうだったら凄く嬉しいなぁ」
Aは、はにかむように微笑んだ。高潮した頬を隠すように、まだ朝食が残っている茶碗を手に取ると、白飯を口の中に掻っ込む。わざとらしい照れ隠しに、ミツバは花が綻ぶように笑った。
この世界に、明けない夜はない。
かつて侍になることを夢見る少年がいた。大切なものを守れるように、もっともっと強くなりたい。それだけを願って突き進む彼を、皆がバラガキと呼んで恐れた。自ら素足で茨の上を歩くその男の姿が、鬼のように見えたからである。
だが、光と闇の両方を背負った女の侍との出会いによって、徐々に厳しい現実が明らかになる。それを青年が受け入れて、それでも前に進むと決めたとき、女の侍の希望と後悔は、新たな人生を祝福する一筋の暁の光へと変わったのだった。
これは、後に「鬼の副長」と
敵からも味方からも恐れられる男の
青い春の物語である。
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☆辻村春樹☆(プロフ) - ハルさん» 初めまして！コメントありがとうございました。沖田姉弟の場面もこだわって書いている部分が多いので好きになって頂けて嬉しいです。総悟は出番少なかったので徐々に増やしていけたらいいなと思ってます！これからもよろしくお願いします。 (2022年1月6日 23時) (
レス) @page35 id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 初めまして。沖田が姉上とデェトと言うところが可愛すぎます……。あと文章がめちゃくちゃ好きです。とても引き込まれます。ミツバの印象のシーンなんてもう感動いたしました！これからも応援しています！ (2022年1月6日 22時) (レス) @page14 id: 2a42df9825 (このIDを非表示/違反報告)
☆辻村春樹☆(プロフ) - いくまさん» わ、嬉しい！ありがとうございます！！需要ないよな、と落ち込んでましたが、おかげでこれからも書き続けられます、更新頑張ります！！（嬉し泣きしそうです…） (2021年12月13日 18時) (レス) id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 新作ドタイプです…陰ながら全力で応援させて頂きますね、、！更新頑張って下さい！ (2021年12月13日 17時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：☆辻村春樹☆ | 作成日時：2021年12月12日 20時
