【10.暁の侍】 ページ35
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翌朝。日の出と同時に、土方は唯一無二の大将と背中を預ける仲間達と共に、武州から旅立った。ある者は別れを惜しみ、ある者は未来に期待を膨らませて。それは、侍を夢見る
そうして季節は巡り、何度目かの春が訪れる。
「ふんふん、ふふん〜」
沖田家の厨房にて。鼻歌交じりに、味噌を溶き入れていたミツバは、全て液体状になったのを確認して手を止める。お玉で少量掬って小皿によそうと、そっと口に含んだ。味を確認し、満足そうに微笑む。
「うん、良い感じね」
火を消して、菜箸を流し台の桶に入れると、背中側で結んだエプロンの紐を解きながら、和室を訪れる。ミツバの自室の隣にあるそこは、かつて客間であった。しかし、数年前に弟が上京した後に、新たに加わった同居人のために、その人物と二人がかりで私的な部屋としたのである。
「起きて下さい、朝ですよ」
障子越しに呼び掛けて、応答を待つ。だが、聞こえてくるのは、すやすやとした気持ちの良い寝息だけ。普段はきりっと身を引き締めているのだが、時折見せる気の抜けた一面に、ミツバは思わず頬が緩んだ。が、あまり和んでもいられない。部屋の主の許可を得ること無く、障子を左右に開け放った。薄暗い室内を照らし出す日の光から逃げるように、黒髪が布団の中に潜る。それを阻止するため、ミツバがグイグイと布団を引っ張りながら、再度声を掛けた。
「ご飯冷めちゃいますよ、Aさんっ！」
「ん、んん……みつば？」
薄く目を開きながら、Aはぼうっと夢現を彷徨う。じっとミツバを見上げながら、ゆっくりと数回瞬きを繰り返し、そして、はっとなって勢いよく上半身を起こした。
「しまった、今何時だっ？！」
「6時を少し過ぎた所です。稽古にはまだ間に合うので、安心して下さい」
「そ、そうか……今日私の担当だったのに、食事用意して貰ってすまないな」
「気にしないで下さい。Aさんが来てくれて家計は凄く助かっていますから」
ミツバは小さく微笑んで見せた。
今まで弟と暮らして来た家で、今度はAと二人暮らしを始めて、早数年が経過した。本当なら、剣の腕の立つAは、近藤や土方達と共に上京するはずだった。ミツバもそう思っていたが、彼女はその誘いを断ったという。理由は分からない。今では、知らないままで良いとすら思う。しかし、あの夜の出来事が関わっているのは、一目瞭然であった。
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☆辻村春樹☆(プロフ) - ハルさん» 初めまして！コメントありがとうございました。沖田姉弟の場面もこだわって書いている部分が多いので好きになって頂けて嬉しいです。総悟は出番少なかったので徐々に増やしていけたらいいなと思ってます！これからもよろしくお願いします。 (2022年1月6日 23時) (
レス) @page35 id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 初めまして。沖田が姉上とデェトと言うところが可愛すぎます……。あと文章がめちゃくちゃ好きです。とても引き込まれます。ミツバの印象のシーンなんてもう感動いたしました！これからも応援しています！ (2022年1月6日 22時) (レス) @page14 id: 2a42df9825 (このIDを非表示/違反報告)
☆辻村春樹☆(プロフ) - いくまさん» わ、嬉しい！ありがとうございます！！需要ないよな、と落ち込んでましたが、おかげでこれからも書き続けられます、更新頑張ります！！（嬉し泣きしそうです…） (2021年12月13日 18時) (レス) id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 新作ドタイプです…陰ながら全力で応援させて頂きますね、、！更新頑張って下さい！ (2021年12月13日 17時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：☆辻村春樹☆ | 作成日時：2021年12月12日 20時
