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「大丈夫だ、私はお菊と幸次郎の味方だよ」
Aが穏やかに笑って告げると、菊は心底安堵したような顔で微笑んだ。
しかし、そんな幸せな日々は長くは続かなかった。生活に心底嫌気が差した沙々木が、金庫に保管してある金銭を盗み、逃亡したのである。菊と、一緒に。
当時、Aは津々楽家の一人として、奉行所に務める父の仕事を手伝っていた。事件の話は自然と耳に入り、無理を承知で関係者に頼み込むことで、捜索に参加したのである。奉行所からの追跡隊も加わる中、Aは誰よりも早く二人を発見することに成功する。これ以上事が大きくなる前に素直に過ちを認めれば、罪が軽く済むかもしれない。強く説得を試みるが、沙々木は一切聞く耳を持たなかった。
「どうしても連れ戻したくば、力付くで止めてみせろ」
そう言い放った沙々木は、無防備なAに突然襲い掛かった。それを紙一重で躱しながら、何度も何度も、胸が張り裂けんばかりに叫んだ。友人と戦いたくないと。だが、どれだけAが、菊が、訴えても沙々木の覚悟は揺るがない。決意を固め、刀を握り締めるA。そうした両者一歩も引かない激闘の末、Aが彼を追い詰め、確実に命を奪う一刀を振り下ろした刹那、菊が沙々木を庇うように飛び出した。
「お菊……！？」
「ッ、なんで……！!」
悲鳴のような甲高い声が、闇夜に木霊する。勢いを止めきれなかった切っ先が、菊の身体を切り裂いたのだ。白い柔肌から、どくどくと後悔と絶望の色が溢れ出す。ふらりと力なく倒れる小さな身体を、Aは躊躇いなく刀を放って、受け止める。
力の無い声で、菊は言った。
幸次郎は悪くない、と。
悪いのは、全部何の
「わたし、Aと幸次郎が戦うのは、見たくないの……」
「ごめん、ごめんお菊、私こんな……ッ」
「自分勝手でごめんね……」
大切にしたかった幼馴染みは、Aと沙々木に優しい呪いをかけて、息を引き取った。その後、外部に協力者でもつくっていたのだろう。運良く追跡を振り切った沙々木は、この時に生まれた憎悪を抱えたまま、行方を眩ませていた。
あれから、沙々木がどんな生活をしていたのか、それは誰にも分からない。知る方法もない。けれども、彼は、いつか必ず自分を殺しにくる。それは確信に近い予感だった。
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☆辻村春樹☆(プロフ) - ハルさん» 初めまして！コメントありがとうございました。沖田姉弟の場面もこだわって書いている部分が多いので好きになって頂けて嬉しいです。総悟は出番少なかったので徐々に増やしていけたらいいなと思ってます！これからもよろしくお願いします。 (2022年1月6日 23時) (
レス) @page35 id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 初めまして。沖田が姉上とデェトと言うところが可愛すぎます……。あと文章がめちゃくちゃ好きです。とても引き込まれます。ミツバの印象のシーンなんてもう感動いたしました！これからも応援しています！ (2022年1月6日 22時) (レス) @page14 id: 2a42df9825 (このIDを非表示/違反報告)
☆辻村春樹☆(プロフ) - いくまさん» わ、嬉しい！ありがとうございます！！需要ないよな、と落ち込んでましたが、おかげでこれからも書き続けられます、更新頑張ります！！（嬉し泣きしそうです…） (2021年12月13日 18時) (レス) id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 新作ドタイプです…陰ながら全力で応援させて頂きますね、、！更新頑張って下さい！ (2021年12月13日 17時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：☆辻村春樹☆ | 作成日時：2021年12月12日 20時
