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「少し話をしないか？」
「俺は話すことなんてねェよ」
「オマエに無くとも私にはある」
「うるせェな、今日はそういう気分じゃねェんだよ」
「ーーなら、仕方ねぇな」
ぴたりとAの足音が止まった。それを気に留めることなく、土方は足を進める。好都合だった。今のざわついた気持ちのままでは、感情の制御が効かない。けれども、Aはそんな土方の親切心を容易くぶち壊した。
「私は、一緒に江戸には行かない」
思わず立ち止まって、振り返る。Aは意を決したような面持ちでそこに立っていた。まるで敵と相対しているような鋭い眼光に圧倒される。冗談だろ、なんて茶化すことは出来なかった。Aの真剣な態度に、土方はすっと表情を消した。
「……何となく、テメェはそう言うと思ってた」
思えば最初から、Aは土方が侍となることに否定的な言葉が多かった。
『……今の侍に、憧れる要素は何処にも無いはずだが』
『そんなに良いもんか？侍なんて』
そう言うときに限って、Aの顔が僅かに曇るのだ。本人は無自覚なのかもしれないが、それは罪と後悔を背負って生きている人間のそれだ。土方も、同じだから分かる。
「ーーなぁA、オマエはこれまで何人
ビクッ、とAの肩が震えた。波一つ無い凪いだ瞳に、大きな波紋が広がる。動揺に揺れた赤は、一転して、放つ光が弱まる。その声も、小さく頼りない。
「……どうして、そう思ったんだ？」
「Aは前に俺に向かってこう言ったろ。綺麗事だけじゃ通用しねぇ。現実に絶望するだけだ、って」
「ああ、言ったな」
「あくまで予想だが、かつてオマエ自身が
何故か妙に説得力があった言葉も、A自身の経験を元にした忠告であったのなら、筋が通る。Aが土方たちが夢半ばで挫折しないように、と母や姉心に近い感情を抱いて言っていたのならば。
「Aが心配する必要はねぇよ。そんな覚悟とっくに出来てらぁ」
「本当か？」
「嘘言ってどうすんだ。松平って奴に従って江戸に出たとて、頼れる人間は仲間だけだ。何が起こるか分からねぇ、血に塗れた茨の道だろうよ。それを分かった上で、もう一度言ってやる」
よく聞いとけ、A。
土方は揺るがない覚悟を示すように、拳を前に突き出してはっきりと宣言した。
「俺は近藤さんを大将に、必ず立派な侍になってやる」
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☆辻村春樹☆(プロフ) - ハルさん» 初めまして！コメントありがとうございました。沖田姉弟の場面もこだわって書いている部分が多いので好きになって頂けて嬉しいです。総悟は出番少なかったので徐々に増やしていけたらいいなと思ってます！これからもよろしくお願いします。 (2022年1月6日 23時) (
レス) @page35 id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 初めまして。沖田が姉上とデェトと言うところが可愛すぎます……。あと文章がめちゃくちゃ好きです。とても引き込まれます。ミツバの印象のシーンなんてもう感動いたしました！これからも応援しています！ (2022年1月6日 22時) (レス) @page14 id: 2a42df9825 (このIDを非表示/違反報告)
☆辻村春樹☆(プロフ) - いくまさん» わ、嬉しい！ありがとうございます！！需要ないよな、と落ち込んでましたが、おかげでこれからも書き続けられます、更新頑張ります！！（嬉し泣きしそうです…） (2021年12月13日 18時) (レス) id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 新作ドタイプです…陰ながら全力で応援させて頂きますね、、！更新頑張って下さい！ (2021年12月13日 17時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：☆辻村春樹☆ | 作成日時：2021年12月12日 20時
