【4.名前のない差出人】 ページ12
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「……眠れなかったなァ」
くあ、と大きな欠伸を一つ。寝ぼけ眼で朝食を終えたAは、のんびりと道場の床掃除に励んでいた。澄んだ青空が広がる今日は、絶好の掃除日和なのである。松平の浪士組の隊士募集の声に応じるのならば、上京する日まであと五日。せっかくだから大掃除をしようという、近藤の提案が全ての始まりだった。
「トシぃ箒って何処に置いたっけ？」
「いや俺に聞かないでくれよ。アンタさっき持ってなかったか？」
「そうなんだけど、いつの間にか無くなって……」
「それなら、総悟センパイがさっき持ってったぞ？」
近藤の困った声を聞き付け、Aは顔を上げる。沖田がやけにご機嫌な様子で「ちょうど良い所に」と立掛けてあった箒を手に取り、走り去って行った事を告げ、その方向を指差せば、近藤は太陽のような笑みを浮かべて言った。
「そうか！ありがとう、津々楽さん！」
「どういたしまして。なんか嫌な予感がするから、早めに取り返した方がいいぞー」
「嫌な予感？」
近藤と土方が揃って首を傾げる。その会話から数秒も経たないうちに、ガシャンと何かが壊れる音。誰かが慌てる声。小さな悲鳴。続いて、手伝いに来ているミツバが、事件を引き起こした犯人を叱る声までもが響き渡る。
「駄目じゃない、お掃除中にこんなことしちゃ！」
ひくひくと、頬が引き攣る近藤と土方を見ながら、Aは「ほらな」と肩を竦めて見せた。
「離れは藤堂や永倉達の担当だろ？そこに総悟センパイもいりゃあ、アイツら絶対箒や雑巾で遊ぶと思ってたんだ」
「それを早く言えってんだ！様子見に行こうぜ近藤さん」
「そうだな。津々楽さん悪いが、道場は任せたぞ」
「おう、任された」
Aが大きく頷くと、近藤と土方が早足で廊下を駆けていく。その後ろ姿を見送ってから、Aはふうと息を吐き出した。
「よし、続きやりますか」
「ごめん、ちょっと良いかな？」
「ん？」
雑巾がけを再開しようとした時、ふとその手を止める。今度は何だ、とAが振り向けば、玄関の掃き掃除を担当していた門下生の一人ーー井上が困ったような様子で、歩いて来る所であった。その手には掃除道具ではなく、一通の手紙が握られている。
「あれ、どうしたんだ井上さん」
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☆辻村春樹☆(プロフ) - ハルさん» 初めまして！コメントありがとうございました。沖田姉弟の場面もこだわって書いている部分が多いので好きになって頂けて嬉しいです。総悟は出番少なかったので徐々に増やしていけたらいいなと思ってます！これからもよろしくお願いします。 (2022年1月6日 23時) (
レス) @page35 id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 初めまして。沖田が姉上とデェトと言うところが可愛すぎます……。あと文章がめちゃくちゃ好きです。とても引き込まれます。ミツバの印象のシーンなんてもう感動いたしました！これからも応援しています！ (2022年1月6日 22時) (レス) @page14 id: 2a42df9825 (このIDを非表示/違反報告)
☆辻村春樹☆(プロフ) - いくまさん» わ、嬉しい！ありがとうございます！！需要ないよな、と落ち込んでましたが、おかげでこれからも書き続けられます、更新頑張ります！！（嬉し泣きしそうです…） (2021年12月13日 18時) (レス) id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 新作ドタイプです…陰ながら全力で応援させて頂きますね、、！更新頑張って下さい！ (2021年12月13日 17時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：☆辻村春樹☆ | 作成日時：2021年12月12日 20時
