これからもずっと/tntn ページ23
あと数分で日付がかわる。そんな時間までなぜ起きているのか。答えは簡単である。明日は私の誕生日だからだ。
私には彼氏がいる。とても大好きな人。別にその彼が日付がかわってすぐに連絡してくるなんて期待をしているわけではない。けれど、優しい彼だからきっと律儀に祝ってくれるだろう、と考えて寝つけないでいるのだ。
あと一分。
明日、彼はどんな風に祝ってくれるだろうか、私にプレゼントを渡してくれるだろうか、彼は恥ずかしがってなかなか渡すことができないかもしれない。そんな独りよがりの妄想に期待を膨らませる。
そして手に握っていたスマホの0の文字が四つ並んだ。
ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ
静かな部屋でやたらと響く音。その音はスマホの着信音で。もしかして、と電話にでた。
「……もしもし？寝てた？」
訛りのある優しい声。愛しい彼の声だ。
「起きてたよ。……どうかしたの？」
「いや、特に用事はないねんけど、声がききたなってん。」
おめでとうとは言ってくれないの、と思ってしまった。折角電話をしてくれたんだ、おめでとうの一言くらい期待してもいいじゃない？
「……そっか。……眠いから寝るね。」
嘘。眠くなんてない。けど、ちょっと悲しくなっちゃったから、悲しさで声が震えてしまいそうだから。だから電話をきりたい。
「え…ちょっ……ま、待ってくれや！」
急に焦ったように大きな声を出すものだから驚いた。なにか用事があったの？と聞けば。
「ん……。誕生日、おめでとな。」
「！…………ありがとう。」
電話越しで良かった。嬉しくて口許が緩んできっと私はみっともない顔をしているだろう。
悲しいことなんてどこかに吹っ飛んでしまった。
「えっと……それでな。」
「うん。…………ん？」
返事が返ってこない。不思議に思ったとき、ピンポーンとチャイムが鳴った。
まさか、なんて期待を胸に玄関の扉を開いた。
「会いたなって、しまっ、て……。」
電話を耳にあてたまま、真っ赤な顔で途切れ途切れになりながら彼はそう言った。
「私も会いたいって思ってた！」
とびきりの笑顔で彼に抱きついた。
「トントン大好きっ。」
「俺も…………好き。」
こんなに嬉しい誕生日は生まれて初めて。
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作者名：大佐 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年2月5日 15時
