貴方に酔いしれる/grpn ページ9
貴「……グルちゃんお酒飲も。」
勝手にグルちゃんの家に来て、お酒を手に持つ私をグルちゃんは、は？みたいな表情をして見下してきた。
向かいあって立っていると身長の差が浮き彫りになる。
「……なにしに来たんだ、お前は。」
呆れ顔で少し冷たい言葉ではあるが、彼は私を中に入れてくれた。
優しくグルちゃんに思わず笑みがこぼれる。
「来るなら連絡くらいしろ。」
食器棚からコップを取り出しつつ、グルちゃんはそう言った。連絡したら別に来ても問題はないらしい。
貴「だって急に飲みたい気分になっちゃったからさ。」
グルちゃんと。そんなことは言うつもりはないが、勘が鋭いグルちゃんならば、なんとなく察しているのかもしれない。
「……何か嫌なことでもあったのか？」
珍しく心配するような表情で私にきいてくる。それだけで、私の心は満たされた。
お酒を注いで、目線を落とす。
貴「……フラれちゃった。」
「…………そうか。」
グルちゃんを困らせてしまうかも、と思って言わないつもりが、一緒にいて安心してしまったのだろうか。口から息を吐くように言葉が出てくる。
フラれたと言っても私も彼もお互いの事をもう好きではないことがなんとなくわかっていた。
私はもうグルちゃんの事が好きなのだ。
そこで私はお酒を一気に飲みほす。
私はお酒が強い訳じゃない、どちらかといえば弱い方になる。けれど仕事に詰まったときとかにはグルちゃんと一緒に飲む事が多かった。
貴「……あのね、グルちゃん。」
お酒はわざと度の強いものを選んだ。あわよくばグルちゃんが私を可哀想におもって慰めてくれるかもなんて考えて。
「…………なんだ。」
貴「…………好き、なの。ずっと、そうだった。」
途切れ途切れに言葉を紡ぐ。グルちゃんが息を呑んだ気配がした。
言ってしまった。酒に酔った頭は理性なんてない。
「A。……口を開けろ」
優しくて、大好きな声で名前を呼ばれる。私は何も考えずグルちゃんを向いて言われたままの事をした。
「…………ふっ。」
薄く笑って酒を口に含むとそのまま私に酒を飲ませた。
「んっ…………。」
重なりあった唇の隙間から入りきれなかった液体が顎から首を伝う。
そのまま舌を絡ませ、私の口の中を掻き回す。
酒に酔っているのか、グルちゃんに酔っているのか段々わからなくてなってきた。
不意に彼が口を離して言った。
「A、離さんからな。」
彼の唇は弧を描いていた。
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作者名：大佐 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年2月5日 15時
