想像して/nisn ページ28
ざくり、ざくりと雪が積もった地面を覚束ない足取りで踏みしめる。
今日はホワイトクリスマスで。
綺麗だと思う反面残念だな、と思う自分がいる。
「あっ。」
思ったよりも足が雪に沈んだと感じた瞬間前のめりに倒れる。ぼふっと情けない音をたてて私は白銀の地面に顔をぶつける。
とっさに抱き締めた彼へのプレゼントにちらりと視線をやると、どうやら無事だということがわかった。
上半身を起き上がらせて目を伏せる。
「何してんねん。」
絶対零度の声。けれどもとても愛しい声。
驚いて視線をゆっくり上へ辿った。
高そうな革靴にすらりとのびた足が見え、コートとマフラーに身を包んで、相も変わらず不機嫌そうな顔。
「にい、さん。」
数秒、彼と見つめあった。何を考えているのか私にもは想像もつかない。
なんで、という言葉を呑み込んだ。兄さんはぶっきらぼうだけれども、本当は優しくて女性にモテるって事は知っていたから。だから、てっきり私の知らない綺麗な女性と肩を並べて、リア充だといわんばかりの行動をとっていると思っていた。
「誰に会いに行くんや？」
私が大事そうに抱えているクリスマスプレゼントを眉を寄せて見てきいてきた。
迷惑がられるかもしれないけれど、それでも兄さんの為に用意したものを渡さなければきっと私は後悔してしまうと予想はしていた。
捨てられてしまうかもしれない。それでも気持ちを伝えたくて、知ってほしくて。
きっとこれが最後になるだろうから。
「兄さんに、渡そうと思ってたの。」
「……そうか。」
私からプレゼントを受け取ってそれをポケットの中に忍ばせた。駄目。まだ、これで終わってはいけない。満足したらいけない。
「わ、私、兄さんの事が、好きでした。」
緊張で心臓がうるさくて震える手を誤魔化すように後ろで手を組んで。目が合わせられない。
自分勝手だって、傲慢だってわかってる。今日で最後にするから、神様、勇気を下さい。
「そ、それからね、私お見合いをしに、実家に帰らなくちゃ行けなくなってね。」
「……は？」
「早く結婚しろって親がうるさくって」
「A。」
「だから、もう兄さんとはさよならしなきゃ、いけなくって……。」
胸が苦しくて、視界がぼやける。駄目なのに。泣くなんてずるすぎる。私はあまりにも卑怯だ。
「俺はAが好きや、どこにもやらん。」
片方の手で手首を掴まれてもう片方の手で顎を掴まれた。
「ーーーーー。」
「は、い。」
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作者名：大佐 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年2月5日 15時
