第四十四話 ページ46
「なんや古谷。今日は飲みっぷりええやん」
缶ビール片手に瀬田はそういう。
「…そーゆー気分なだけだ」
零が帰ってから一週間。
瀬田と飲みに行く約束をしていたため(と言っても宅飲みだが)、やけ酒ではないがたくさん酒を飲んでいる。
「なんや、古谷。失恋でもしたか」
思わず、持っていた缶ビールを落としそうになった。
「おまっ…何言ってっ」
「図星やったん?俺の勘冴えとるわー」
「…なんでわかったんだよ」
瀬田は枝豆をつまみながら言った。
「そんなん、ずっとお前の幼なじみやってきた俺に言うセリフかいな」
ああ、そうだったな。
「何年、お前のこと見てきたと思っとんのや。…お前の両親が亡くなってから、一度も見せたことの無い笑顔をまた取り戻せたのは、相手がいたからちゃうんか」
普段、おちゃらけた雰囲気の瀬田は一変。
真剣な眼差しをこちらに向けている。
「そうかも、知れないな。彼のおかげで、私はまたあの頃みたいに笑えてたんだ」
散々泣いた。
零がいなくなって、散々。
それなのに、また、涙が目に溜まる。
今にもこぼれ落ちそうな涙を拭ったのは、瀬田の優しい手だった。
「こんな目ェ腫らして。相手は幸せもんやな。こんな思われて」
「だと、いいけどな」
ヘラりと笑ってみせる。
「…まあ、あれや。古谷。今日は飲め。気持ち悪くなるくらい飲め。ほんで、明日吐いて忘れたれ」
私にビール缶をもう一本差し出してきたので素直にそれを受け取る。
「ありがとうな」
「ほんまやで」
また缶ビールの蓋を開け、私はそれを喉に流し込む。
そうだ、忘れよう。
あれは、ただの夢なんだ。
アニメキャラクターがこちらに来るなんて、ありえない事なんだ。
もう、忘れてしまえ。
「………っはは。忘れれるわけ、ないだろっ」
瀬田は何も言わずに、ただ隣で酒を飲む。
瀬田の優しさに感謝しつつ、申し訳なく思いながら
涙をぽろぽろと手へと落とすのだった。
、
、
、
そんな私は、気付いたら。
、
知らない場所にいた。
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ぷぅ(プロフ) - はい、大好きな作品で何度も繰り返し読ませていただいてますし、これからも繰り返し読ませていただきますね(#^.^#) (2020年9月19日 23時) (レス) id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
yu-kun(プロフ) - ぷぅさん» そう言って頂けて幸いです。忙しさを理由に小説を書けていない事、申し訳ないです…。私の小説のためにコメントしてくださってありがとうございます。まだ好きでいてくれてありがとうございます。ぷぅ様、これからもこの小説をよろしくお願い致します。 (2020年9月19日 23時) (レス) id: 60a3e99319 (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ(プロフ) - いえいえ、違うかもしれないですけど大好きな作者さんが頑張って書いてくれた素敵な作品をもし盗作されたらと思うと悲しいので( >Д<;) (2020年9月19日 23時) (レス) id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ(プロフ) - プロフの名前はくまたそです。 (2020年9月19日 23時) (レス) id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
yu-kun(プロフ) - ぷぅさん» これから確認し、内容次第作者様の方にご連絡差し上げようかと思います。わざわざありがとうございました。 (2020年9月19日 23時) (レス) id: 60a3e99319 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:yu-kun | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/yyyh/
作成日時:2019年3月10日 14時