第三十話 ページ32
今、私の目の前にはエプロンを着けて洗い物をしている降谷がいる。
「…本当にいいのか?」
「ああ。色々世話になってしまったからな。これくらいしなければ性にあわないよ」
「…そうか」
少し申し訳なく思いながらも、降谷を見つめる。
洗い物をしているだけなのにかっこいいのは何故だ。
洗い物をしているだけなのに
手際よく食器を洗い水気を取り棚に戻していく。
なんか負けた気分だ。
…でも、降谷がモテる理由も頷ける。
ポアロで降谷に惚れた女性は何人いるんだか
「…羨ましい」
「ん、どうした?」
「…え、あっ…なんでもない!」
つい、口に出してしまった。
気をつけなれけば
「…いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」
「え…」
「カウンター席へどうぞ」
「……あぁ」
降谷が引いてくれた椅子に素直に座る。
「お疲れのようですね…。本日の紅茶ですが、ジャスミンティーなどはいかかですか?ジャスミンティーはリラックス効果が期待されている紅茶なんです」
そう言いながらシンクの周りの水を拭いていく降谷。
「じゃあ、それを頂こうかな」
「はい、かしこまりました」
水気も取り終え、慣れた手つきで冷蔵庫から麦茶が入った冷水筒を取り出し先程洗ったコップに注ぎ、私に差し出した。
「お待たせしました、ジャスミンティーです。…なんてな」
「くっ…くくっ…。生で安室透を見れるとは思わなかった…くふっ…しかも麦茶…っ」
「…そこまで笑うか」
「あぁ、悪い。おかしくてついっ…」
笑いすぎて出た涙を人差し指で拭う。
「ま、元気が出たならよかったよ」
「…え」
「…さっき、暗い顔をしていたから…その、元気付けようと…」
心配、させてしまったのか。
ああ恥ずかしい。
「…あれは、いつもポアロで降谷のこの姿を見て、どんどん降谷を好きになっていく人達に嫉妬して……だから、気にしないでくれ」
真っ赤だろう自分の顔を腕で隠す。
いや、隠そうとした。
だが、それは降谷によって阻止されたのだ。
「…降谷…?」
「…A。Aって呼んでいいか」
「あっ…あぁ…好きなように呼んでくれ…」
「…A。僕の事も、名前で呼んでくれないか」
お互い顔を真っ赤にしながら見つめ合う。
それが小っ恥ずかしくて、思わず目を逸らした。
「……れ、零…」
なんとか絞り出せた降谷の名前。
それを聞いた降谷は満足そうに笑った。
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ぷぅ(プロフ) - はい、大好きな作品で何度も繰り返し読ませていただいてますし、これからも繰り返し読ませていただきますね(#^.^#) (2020年9月19日 23時) (レス) id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
yu-kun(プロフ) - ぷぅさん» そう言って頂けて幸いです。忙しさを理由に小説を書けていない事、申し訳ないです…。私の小説のためにコメントしてくださってありがとうございます。まだ好きでいてくれてありがとうございます。ぷぅ様、これからもこの小説をよろしくお願い致します。 (2020年9月19日 23時) (レス) id: 60a3e99319 (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ(プロフ) - いえいえ、違うかもしれないですけど大好きな作者さんが頑張って書いてくれた素敵な作品をもし盗作されたらと思うと悲しいので( >Д<;) (2020年9月19日 23時) (レス) id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ(プロフ) - プロフの名前はくまたそです。 (2020年9月19日 23時) (レス) id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
yu-kun(プロフ) - ぷぅさん» これから確認し、内容次第作者様の方にご連絡差し上げようかと思います。わざわざありがとうございました。 (2020年9月19日 23時) (レス) id: 60a3e99319 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:yu-kun | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/yyyh/
作成日時:2019年3月10日 14時