６ shinji ページ32
び、びっくりした。
オレはポカーンと口を開けたまま彼女を見上げた。
いつも無表情でなにを考えてるかわからなくて、時たま崩れることがあってもほんの一瞬だけ。そもそも感情が表に出る事なんて一切なかったのに。
激しく感情を爆発させた彼女は。
まるで身体中のパワーをすべて出し切ったように、テーブルに手をついてはぁはぁと肩で息をしている。
えーっと。
ここはなんて声をかけたらええんやろ…？
あまりの迫力にすっかり毒気を抜かれたオレは…ダメや。まだ立て直せてへん。
どう対処すべきか悩んでいると。
いきなり樹里ちゃんはガバッと身を起こして、背筋をピンと伸ばした。
「帰ります」
と、短く言うや否やエプロンを外して荷物をまとめ出した。
衝撃的な大爆発をやってのけたクセに、なんやのこの素っ気なさは。
テキパキと動き回る樹里ちゃんの後ろ姿をぼんやりと目で追う。
いつまでも呆けててもな、アホみたいやし。
開いたままだった口をムグッと引き締め、今までの出来事を処理をするべく脳内は慌ただしく動く。
言うた事は大概にせぇっちゅう感じやけど。
‟オレ”の事を、‟オレ”のために怒ってくれてるんだと直感がそう教えてくれた。
脳内に幾度も再生される樹里ちゃんのあの目。
甘さも色気もなく、真っ直ぐオレを見つめる強い瞳の色。
オレ自身に向けられる視線は激しかったけど、その裏側に優しさが隠れていてなんだかとても嬉しかった。
そして…妙に恥ずかしかった。
思えばいったいどれくらいぶりだろう。
あんな風にオレのために怒ってくれる女の子に出会ったのは。
おぉぉ。ブルッとした。
背骨から腰にかけて感じる甘い痺れが走る。
なんや口ん中が甘酸っぱなってして、それが妙に決まり悪い。
慌てて麦茶でそれを洗い流した。
すると、帰り支度が終わったのか、樹里ちゃんが玄関に続くドアに手をかけた。
そしてこっちを一切見んと、さっきとは打って変わってめちゃくちゃ事務的な声を出した。
「丼はちゃんと洗っておいてくださいね」
「ん」
「…あと」
「ん？」
一呼吸、二呼吸。
小さく細い肩が揺れる。少しだけこっちに振り向いた頬が赤く染まってる。
「…さっきは言い過ぎました。ごめんなさい」
聞き取れるか取れないかくらい小さな声でそう言うと。
彼女はさっさと帰ってしまった。
は、はい？
なにそれ、言い逃げ？
玄関が締まる音を聞きながら、オレは思わずぷっと吹き出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 183人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「サッカー日本代表」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちさと(プロフ) - あけみのりさん» ご無沙汰してます！あけみのりさんにも読んでいていただいてたなんて♪本当に嬉しいです！せっかくならとかたつむりファミリーに入れてみました^_^なかなか進展しませんでしたが、ここから畳み込みます。頑張りますので、引き続きお付き合いくださいね (2018年8月20日 23時) (
レス) id: ff298968ef (このIDを非表示/違反報告)
あけみのり(プロフ) - ちさとさーん！お久しぶりです(^-^) 新作始まってからちゃっかり読ませていただいてますよ(^_^)v いよいよ気持ちが動き出しましたね！ お馴染みのメンバーも出てきて嬉しいです。続きも楽しみにしてますね(^^)/ ちさとさんのペースで更新待ってます！ (2018年8月20日 22時) (レス) id: 27aa1d491f (このIDを非表示/違反報告)
ちさと(プロフ) - 716(なないろ)さん» わぁ！716さん！！お久しぶりです〜っコメントありがとうございます♪嬉しいです。初香川さんメインでドキドキでしたが、楽しみにしていると言ってもらえて励みになります。続きもよろしくお願いします (2018年8月7日 21時) (レス) id: ff298968ef (このIDを非表示/違反報告)
716(なないろ)(プロフ) - お久しぶりです！新作公開おめでとうございます！かがーさんですかぁ〜(^∇^)確かに売れ残っている大物ですなwまたクセのありそうな魔女さんですが、続きも楽しみに待ってます！ (2018年8月7日 15時) (レス) id: c421c2d9db (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちさと
| 作成日時：2018年8月6日 17時
