かたつむりの輪舞（ロンド） 第１章

第２話　Atsuto side ページ10

昨日はアウェイの試合だったから、チームはオフだったけど。
リハビリ中のオレは、そんなの関係なく
いつも通り練習場で汗を流した。

焦らない。なにごとも淡々と。

頭ではわかっていても、こう負けがこんでくると、
早くチームに戻らなきゃと、知らず知らず気が急いてしまう。

ドクターとの話し合いも、たいして代わり映えしないし。
多少気持ちが落ちてるなぁと、感じながら車を走らせていた。

すると、家に戻る途中、
公園内のグラウンドで、サッカーをしている子ども達の姿が目に入った。

ふと、
このあいだのサッカー教室を思い出した。

たまには気分転換がてら、覗いてみるかと、
オレは車を降りて近づいた。

トレーニングマッチかな。

審判もジャージだし、ユルユル感が漂ってる。

くっくっく。
それにしても、ユル過ぎだろ。
ベンチの子達、草むしりしてるじゃん。

だけど、
お母さん達の応援は、めちゃくちゃ気合いが入ってる。
そこは、日本もドイツも変わらないんだな。

オレは気付かれないように、パーカーのフードを被って、お母さん達の反対側に陣取った。

ふぅん、8人制かぁ。

いっちょ前にダボダボのユニフォームを着て。
ちっちぇクセに、真剣そのものって目をしてる。

だけど。
間近で見て気がついた。

ぷっ。
コレ、サッカーじゃないだろ。

オレは思わず吹き出した。

ボールに全員で群がって、パスらしいパスなんて1個もない。
ボールがこぼれりゃ、またみんなで群がって、寄ってたかってケリを入れてる。

そういや、
オレも始めたばかりの頃は、こんな感じだったな笑

それにしても。
ボールと子どもが一緒くたになって、移動するから、
審判も見えづらくて大変だ・・・。

あぁ、ほら。タッチライン割ってるの、気づいてない。

あの審判の角度からだと、よく見えないのかなぁ。
と、傍で見ているオレの方がヤキモキしてきた。

口を出したくて、ウズウズしてきたところに、
フラフラっとハーフラインを越した影を発見した。

あ、おいおい。
キーパー、出過ぎだろ。

ゴールガラ空きじゃんか、と突っ込みそうになった途端。

「ケイトっ！キーパーでしょ！もっと下がってっ！
ヒロっ、そこはオフサイド！」

と主審から指示が飛んだ。

あれ、ここドイツだよな？

笛を吹きながら、日本語でバンバン指示出してるあの主審。
目を凝らして、よく見ると・・・。

あ、あれ。
『紫陽花』の子だ。
コーチをしてるって、このチームだったんだ。

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