かたつむりの輪舞（ロンド） 第１章

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確かに、菜月さんは、美人さんだし。
オトナっぽいし、スタイルもばっちりだし。

改めて確認する必要もないけど、なんとなくエプロンの胸元をちょこっと引っ張ってみた。

う・・・ん。ペッチャンコとは言わないけど、
立派なモノを持ってますとは逆立ちしても言えないな、私。
ま、別に。関係ないけど。

・・・なのに、
どこかが、なんかチクチクする。
説明のつかない痛痒さ。

目の前では、彼がヘンな雄たけびを上げながら、私のiPhoneの画面を指で弾いている。
モジャモジャした内田さんの頭を、カウンター越しに見下して。

なぜか、ため息１つ。

ふぅん・・・。
内田さんも

「あぁいうキレイで色っぽい人がタイプなんだ。」

思わずこぼれちゃったひとり言。
でも、ばっちり聞こえてたみたい。

「はぁっ？！なに言ってんだよっ！」

と、内田さんはガバッと顔を上げた。
慌てたその素振り、なによ、やっぱり図星なんだ。
そう思いながら、

「だって、お色気ムンムンだって言ってたし、名前だって覚えてたし。」

と、指摘すると、

「なに言ってんだよ、ただの一般論。
見たままを言っただけ。」

と、ムッとした顔で返してきた。
でも、ホントにそれだけ？目元が少し赤くなってるじゃない。
疑いの目で彼を見返すと、

「それにオレは、ほぼ毎日ここに来てんだぜ。
そんで、年中サボって喋くってるAちゃんを見てんの。
イヤでも常連さんの顔と名前ぐらいは覚えるさ。」

ピクリとまゆを片方だけ上げて、やましいコトはないと言い張る彼。
でも、どこか言いわけみたいに聞こえて、納得できないでいると、

「なに、痴話げんかしてるのよ。」

と、さと子さんが私と内田さんの会話に、割って入ってきた。
そんなコトしてないと、言い返そうとした私たちに、
しれっと、

「内田くんはなに食べるの？」

と、知らん顔で注文を聞いた。
あまりに鮮やかな切り返しに


「あ、今日はちょっとヤボ用があって、飯はもう食ってきたんっす。

・・・で、出来れば明日の朝、食うモノが欲しい、なぁ・・・なんて。」

彼も面喰って、最初はハキハキ、
でも内容が内容だけに、最後の方はゴニョゴニョと希望を伝えてきた。
おずおずと差し出されたお弁当箱を、さと子さんはくすくす笑いながら受け取って、

「ちょっと待っててね。」

と、彼に短く言って、私に目配せをした。
その目は明らかに、「油売ってないで、仕事しなさい」と伝えていて、

私は肩をすくめて小さく「はぁい」と返事をした。

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