第5話 ページ34
「ねぇねぇ、Aちゃんの彼、今日は来ないの?」
食後のコーヒーを出したタイミングで、菜月さんが急に話を振ってきた。
しかもその内容ときたら、突拍子もなくて。
「え?彼って。誰のコト?
私、今付き合ってる人、いない、けど?」
身に覚えのない内容に、首を傾げながらそう答えると、
その艶やかな目元に、からかいを滲ませて、
「またまたぁ。誤魔化さなくてもいいのに。」
と、くすくすと笑った。
ホントにそんな人いないのに。
口を引き結んで、顔をしかめると、
なにを勘違いしてるのか、隠してもムダよ、と意味深な笑みを浮かべて、ちょいちょいと、空席を指差した。
それはカウンターの一番奥。
あそこは、確か・・・。
菜月さんの言わんとしている人物に思い当たって、私は大慌てで否定した。
「ち、違う、違うっ!!全っ然、違うからっ!!
付き合ってないって!!」
「えー、だってあの人、Aちゃんとだけは、いっつも楽しそうに話してるじゃない。」
白状しなさいと、さらに瞳を煌めかせた。
「そ、それは、私のチームのコトを話してるだけで。
別にそういうんじゃなんかないからっ。」
「あら、そうなの。てっきり付き合ってるんだと思ってた。」
そう言って笑ったこの人は。
鈴木菜月さん。旅行代理店の現地添乗員をしてる、うちの常連さん。
ご飯を食べに来るだけじゃなくて、ここでのお喋りを楽しみに来てるって感じ。
年は私より3つ上で、お客さんというよりお姉ちゃん的存在。
「でも、ま。良かったわ。あんなむさ苦しい人に、Aちゃんはもったいないもの。」
と、私の否定に満足気にうなづいてみせた。
え。む、むさ苦しいって。
ふぅむ。いつも“彼”を思い出してみる。
まぁ、確かに無愛想だし、寝ぐせバッチリの時も多いし、
無精ひげを生やしてる時もあるし、ジャージだし・・・。
あ、あれ。フォローするつもりが、思いつくコト全部“むさ苦しい”に繋がっちゃう。
さと子さんも同じことを思ってるのか、隣で苦笑いしてる。
それにしても。
菜月さんは、彼が内田さんだって気付いてないんだ。
さと子さんが話好きのせいか、常連さん達は長っ尻で、よくお喋りしていく。気づけば、常連さん同士で話が弾んで、すっかり仲良し、なんてままあるコト。
その中で、いつも1人。
隅っこで黙々とマンガを読んだり、iPhoneをいじくったり。
いつも俯き加減で、話しかけづらい雰囲気満載なんだもの。
気付かれないのもしょうがない、のかも。
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ちさと(プロフ) - 空さん» コメントありがとうございます(*^^*)新章なので少し動きます。むふ。ザワザワドキドキはどうなるのか、お楽しみに♪更新頑張ります (2015年1月19日 19時) (レス) id: 49690accd7 (このIDを非表示/違反報告)
ちさと(プロフ) - シナノさん» シナノ先生!レポート提出です!これちゃんと単位もらえます?課題のデレからのツン。心臓強いわ、もバッチリ入れたし、不可なんてことはないですよね笑 (2015年1月19日 19時) (レス) id: 49690accd7 (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - あらっ2人共おなじようなざわつき(・∀・)天邪鬼さんだからなぁ〜ざわざわドキドキはもう少し続きそうですね(笑) (2015年1月19日 19時) (レス) id: 3eff98c7b3 (このIDを非表示/違反報告)
シナノ(プロフ) - ガガガ…キュン死orzこれでもかーこれでもかーきたね!このお互いのざわつく気持ち、大好物! (2015年1月19日 18時) (レス) id: 4d7ea8abd2 (このIDを非表示/違反報告)
ちさと(プロフ) - まほちんさん» コメントありがとうございます(*^^*)ゴムチップ、人工芝ですね。羨ましいです。今日もかたつむり発生しましたが、枯葉がビッシリでした(T . T)コイツらも結構しぶとくへばりつくんですよね。団子サッカーが懐かしく思って書いてます。これからもよろしくお願いします (2015年1月19日 0時) (レス) id: 49690accd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちさと | 作成日時:2014年12月25日 15時