かたつむりの輪舞（ロンド） 第１章

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「ちょ、ちょっと。なに〜〜っ？」

いきなりトモがピヨピヨ言い出したと思ったら、
あっという間に他の子にも伝染っちゃったじゃない。

まさかと思って、パッと顔を思い当たる節に目を向けると。
・・・やっぱり！！

元凶と思しき人が、肩を震わせて笑ってる。

もう。信じられない。
この子達は、可愛いから許すとしても、
なんなの、このイタズラは。
もう知らない。ムシしちゃお。

「ピヨピヨはいいから、早く食べちゃって。
片付け終わってないでしょ。“かたつむり”がいっぱい落ちてるよ。」

私は腰にぶら下がる子ども達を、剥がしながら“かたつむり”の集団を指さした。
すると、「はぁい」と元気に返事して、モグモグ口を動かしながら、荷物置き場に移動し始めた。

「なに、“かたつむり”って。」

内田さんは、よいしょっと年寄りくさく立ち上がって、不思議そうに聞いてきた。

「イジワルな人には教えません。」

ツンと横を向いて、抵抗すると、

「じゃぁ、アイツらに聞いてこよ。」

ふふんと、鼻で笑って子ども達の群れに紛れこんだ。

ふっふっふ。残念でした。
あの場所でその意味を知るためにはね、“かたつむり”の洗礼を受けなくちゃダメなのよ。

しゃがみこんで、子ども達に話しかける彼の後姿を眺めながら
私は、くすりとほくそ笑んだ。

「うっわっ！くっせっ！！」

ぷぷ。このタイミングでそこに近づくのは危険なのよ。
やめろ、やめろと逃げ回る内田さんに、子ども達はおもしろがって“かたつむり”片手に追いかける。

「なんだよ、“かたつむり”ってソックスのコトかよっ！」

逃げ回りながら、大声で確認してきた。

「うん、そう。
だって、いつもくしゃくしゃに丸めたまま、脱ぎ散らかしてるんだもん。
かたつむりみたいでしょ。」

なんか、子ども達が私のカタキを取ってくれたみたい。
スッキリした気分で、私は最後の片づけに取り掛かった。
バサバサとブルーシートを畳んでいると、

「コーチ。ぼくのかたつむり、くさい？」

と、ケイトが楽しそうに聞いてきた。

「臭い、臭い。
って、これサトシのじゃないの？」

確か、ケイトのは青だったと思うけど。
記憶を辿りながらそう言うと、くんくん臭いを嗅いで、

「ホントだ。サトシのだ。」

と、ホントの持ち主に向かって走っていった。
その後ろ姿を見送りながら、内田さんがポツリと呟いた。

「アイツら、犬みてぇ。」

「ふふ。内田さんだって、絶対やったことあるでしょ。」

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