かたつむりの輪舞（ロンド） 第１章

　Atsuto side ページ11

別に、
「オレよりコーチの方がカッコ良い」
って言われたの、根に持ってるわけじゃないけど。

ちょっと彼女を観察してみる。

背は。
オンナの子にしては、ちょっと高め。

ピステをさらりと着こなして、
キビキビとした身のこなし。

キリリと引き締まった大きな目。
良く通る声で、
次々に子ども達に指示を出してる。

顔立ちだって、悪くない。
というより、美人の部類に入る。



ふぅん。
確かにカッコ良いな。と素直に思った。

ボンヤリと彼女を観察していたら、

“ピ、ピ、ピーッ”

と、ホイッスルが鳴って、
あっという間に試合終了。


うっわ。短けっ！
小学生ってこんな短かったっけ？

ベンチからも、
ワラワラと子ども達が出て来て、
超デッカい声で挨拶してる。

ぷぷ。なんだよ。
試合中より元気じゃね？

で？
あの子のチーム、勝ったかな？

見てる限りじゃ、
どっちかわからなかったけど。

・・・イヤ、
負けたっぽいな。

だけど、
負けたコト、全然気にしてないみたいだ。
どの子もあっけらかんとしてる。

ま、これくらいの子どもなんて、そんなもんかもな・・・。

オレは小さい頃から、
負ける度に泣いてたような記憶があるけど。
アレはいつの頃だっけ？

記憶の糸を辿りながら、
子犬みたいにじゃれ合ってる、子ども達の後姿を目で追いかけた。

すると、そのうち、
おにぎりを食べたり、着替えたり。
それぞれ帰り支度を始めた。

なぁんだ、もう終わりか。
ちょっとしか見れなかったな。

残念と思いつつ、来た道を戻ろうとした時。
1人のオトコの子が視界に入った。

あ、あの子、
さっきのキーパーだ。

半分遊びながら、
帰り支度してるチームメイトから離れた所で。

・・・スッゲぇ泣いてる。
しかも、近づいて来たコーチのあの子に、
威勢良く文句まで言ってる。

彼女は、
膝をついて、その文句にうんうんと頷くと、
一言、二言、声をかけて。
その小さなカラダをギュッと抱きしめた。

ゆっくり背中を撫でられてるその子は。


・・・なんか、オレみてぇ。

そうだよ、確か。
オレ、これくらいの頃から、
“負ける”という言葉が、人一倍嫌いで。
よくあんな風に泣いてたな。


オレは、その小さな背中から、
しばらく目を離せずにいた。

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