今日も狼と対抗中【中原中也】

２、保健室の日常 ページ2

中原が高校三年に上がった時、丁度其の先生も学校にやってきたのだ。

養護教諭、椎奈(しいな)先生。
綺麗な先生で、すぐに先生目当てで保健室に通う生徒が出たくらいだった。

中原は其の時、まだ先生に恋心など抱いていなかった。
少し素行や服装が悪い中原は、風紀委員と言い合いになる事もしばしばあり、問題児だったのだ。

其の為、保健室の話なんかより先生のお小言が耳に入った。


五月の終わり。
少しやんちゃをして、同級生と喧嘩をした。
殴られたら殴り返すがモットーである中原は勿論、怪我をしたのだ。


其の時、手当てしてくれたのが椎奈先生だった。

「喧嘩はしても良いけど、怪我はしないでね。折角一番楽しい青春なんだから」




ひまわりのような笑顔に、落ちた。


其れからと云うもの、態と怪我をして会いに行ったり、昼休みに手伝いに行ったりと、何かと理由を作っては頻繁に保健室へ通った。


保健室通いは、今日も変わらない。


「せーんせっ！」

「また来たの、中原くん」


人懐っこい、普段の中原とは思えない笑顔でドアを開けた。
椎奈先生は頻繁に来る中原に苦笑している。

「何処怪我したのよ」

「否、怪我してません。手伝いに来ました」


保健委員より保健室に居るであろう中原。
書類を運んだりと、何かと手伝ってくれる。

「ざんねーん、先刻片付け終わったの。だから、帰った帰った」

「……別にいいじゃないですか。其れとも俺の事嫌いですか？」


そう云う云い方されると、言葉に詰まる。
偶にこう云う事を云われるので、反応にも対応にも困るのだ。

「はいはい、生徒に好きも嫌いもないわ。お茶淹れるから座ってて」


____ほんと、狡い。

３、貴方の処に→←１、狼よりわんこが好きよ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す