ツングースカ大爆発・kwmr ページ5
「河村さんが死んだら」
「うん?」
「色んな人が死にますね」
「うーん、そこまでの影響力はないと思うんだけど」
「ウェルテル効果って知ってます?」
「知ってるよ。有名人が死んだら信者も死ぬから結局死者の数が増える傾向のこと」
「よくご存知で」
「それが職業だからね」
Aは眉一つ動かさずにその美しい脳内で僕を殺した。彼女の世界において支配者は軍を持った独裁者でも権力を持った金持ちでもなく、僕の隣でソファに腰掛ける、日本生まれ日本育ちの美しい女であった。
誰も立入ることの出来ない麗しさを持つ世界の片鱗を垣間見ることが出来るのは恋人である僕の特権である。彼女の前では男は皆路肩に転がる石だが、そこから血反吐を吐いて這い上がった結果は僅か数ミリの理解。何を考えているか分からない、なんて平凡な言葉では彼女の爪の先をもあらわすことなんて出来やしないのだ。現にそう、彼女は耽美な横顔を惜しげも無く晒して僕と視線を合わせない。それは恋人という彼女にとって初めての存在にその世界を壊されることを恐れている物的証拠だった。
その艶やかな頬を撫でると睫毛を震わせる。彼女のささやかな振動が僕の世界をも揺らした。
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作者名:狭 | 作成日時:2021年9月10日 0時