【QK】門前【ini】 (ページ7)

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目にページ7

「実は俺、金古さんが好きらしいんですよ」

「伝聞なの？」

「須貝さん情報です」

余る

「最近仲良いじゃん」

「…俺？」

「と、金古ちゃん。知ってる？あんたら、暇さえあれば牌弄ってんのよ」

「麻雀が共通点ですからね」

「毎日お菓子も買ってきて」

「あの人、賭けないと何もしないんですよ」

「マウント取るじゃん。絶対好きでしょ」

「好き…？」

乾は首を傾げた。20年近い人生で好きという言葉を初めて聞いたようなその表情に須貝は思わず吹き出し、昼飯のサンドイッチに噎せた。デスクに飛び散ったパンクズを手でスライドさせてゴミ箱に落とす。ポロポロと袋に飲み込まれる様を須貝が見届けもせずに乾に向き直ると、乾は思わず肩を揺らした。瞬きは普段よりもゆっくりになり、やがてはやくなる。視線を上下左右にさまよわせ、スマホカバーを意味もなく触り出すその姿を見て須貝はようやく、自分がどんなミスをしたのか理解して天を仰いだ。

「好き…好き、」

「は？嘘だろお前、気づいてなかったん？」

「そ、そんなに分かりやすいんですか！？」

「おま、あんなにダイスキ！って感じで尻尾振りながら後ろついてまわってんのに」

「嘘でしょお！！」

「なに、うるさいんだけど。今撮影中だから少し声抑えて」

「違うのよ河村君、これにはふか〜い事情があってだなあ」

「ハイ？」

「乾初めての恋」

「すんません今すぐ撮影中止で」

撮影部屋から顔をのぞかせた河村に須貝はタイムのポーズをとって物凄く簡潔に事情を説明する。全てを把握した河村は眼鏡の奥で目をパチリとひとつ瞑って撮影部屋を振り返り、いつもよりも上擦った声で全員集合と叫んだ。乾の声が聞こえていたことで何かあったのかとソワソワしていた渡辺が一番に部屋を飛び出してくる。山本福良と続き、最後に八時にもなってませんよなんて小ボケをカマしながら出てきた伊沢は乾を囲むメンバーを見てキョトンとした顔をした。須貝は慰めもしてくれない蛍光灯から目を離してもう一度事情を説明する。メンバーは全員考え込み、一斉に首を横に振った。それがことの始まりである。

その場に居なかった福良は乾からその話を聞き、眉を寄せた。色恋沙汰には興味が無いし、金古とは折り合いが良くない。だが可愛い後輩からアドバイスを求められたのだから何か言わなければ。ジレンマに陥った福良は渋々口を開いてこう言った。

「…コイントス」

「それだ！！」

乾は指を鳴らした。