【QK】門前【ini】 (ページ6)

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ひざをページ6

「週末何してました？」

「駅前で沖スロ」

「…不健康ですねぇ」

交える

山上は苦笑いをした。金古の評判は知っていたからなるたけ近すぎないことを念頭に置いて接していたが、あまりに距離が遠すぎても仕事には支障が出る。金古はこう見えて山上より年上であり上司でもあるから、可能な限り機嫌を損ねるような事(例えば彼女の悪癖にして趣味)には口を出さないようにしている。だから、山上と金古の関係はとても微妙なものであり、社員が軒並み外出したことによってオフィスに二人きりの状況となると気まずいのだ。

そんな山上の心境を知ってか知らずか、金古はマイペースにパソコンと向き合っている。今はキーボードを叩くその手が普段だと牌やカードや馬券を握りしめているのかと考えると、山上は少し妙な気分になった。祟が怖いので神には触らないようにしているが、正直怖いもの見たさはある。クイズプレイヤーともなれば好奇心は欠かせないものであるからして。誰も居ないという状況もあったかもしれない。だから山上は週末何してた？なんて定型文とも言える話題を金古に提供し、見事予想を裏切られる。

「沖スロ…」

「やったことある？」

「無い…というより、賭け事全般に疎いです」

「そ」

金古は一瞬だけ山上の方を向いたが、賭けに興味が無い事を知るとすぐに普段の無表情に戻ってパソコンに向き直る。その露骨な様に、山上は困った様に頬を掻いた。山上の持つ賭けの知識は競馬競輪などの公営ギャンブル、IRなどの時事ネタ、あとはアカギ等の漫画くらいなもので、知ってはいるが実体験はほぼ皆無というのが事実である。最近のお気に入りの台は？と聞いたとしても台の違いなんてよく分からないし、打った感触だって知らない。今度行ってみようかな、なんてチラと脳の片隅で考え、でも実の所行かないのが実態だった。

「でも麻雀できるでしょ」

「え？」

「麻雀。…違った？」

「あ、いや、出来ますけど…言いましたっけ？」

「ヤマモト」

「あ、なるほど」

山上は驚いた。何故いきなり？答えは簡単、金古が山本と話す機会が増えたからだ。金古は麻雀が出来る人が欲しい。いつでも賭けが出来る職場なんて最高である。だから麻雀ができる人を山本から教えてもらい、名前と顔を少しづつ一致させていた。山上はそれを知らないからして驚いたのである。そんな中途半端な会話と情報が招いた喜劇は、騒がしく帰ってきた同僚集団によって幕を下ろされた。