恋心詰め合わせ【HQ!!短編】

青い春に別れを告げて　【菅原孝支】 ページ14

私は、いわゆる片思いってやつをしている。相手は同じクラスの菅原孝支くんだ。片思いというものは、しているだけで世界がキラキラと輝いているように見えるし、学校に行くのが楽しくなる。彼を良いな、と思い始めたのは、同じ飼育委員になり話す機会が多くなってから。それからは毎日の委員会の仕事で、少しでも菅原くんと話すのが私の楽しみになっていた。

「菅原くん、今度のテストどう？」
「あー、微妙。英語の範囲広いよな」
「うんうん！ 数学はいけそうなんだけどねー」
「割と簡単だよな！ ちょっと嬉しいべ」

そんな他愛もない会話をしながら菅原くんと仕事をするのはとっても楽しい。いつも大人びたというか、どこかお母さんのような雰囲気の菅原くんが時折見せる、子供みたいに無邪気な笑顔。その笑顔が私に向けられるたびに、私の胸は大きく音を立てるのだ。それから菅原くんは誰にでも優しいし、バレーに打ち込んでいる姿もカッコいい。もっとも、菅原くんがバレーをしている姿を見たのは体育のときだけなのだけれど。
ウサギを撫でながら穏やかな雰囲気を身に纏う菅原くん。私はその姿にしばらく見とれてしまっていた。

「そういや、俺高校入試のときさ」
「……っうん？」
「コンパスぶっ壊れて！ 修理して作図の問題を解くためだけに何問も犠牲にしちゃったんだよなー」
「もったいない！ ……でも私も、有理化するの忘れちゃって。教室出るときに気付いたんだよなあ」
「あと、合同のとこ！ 思いっきり相似の証明したんだよな……まあ、受かったから良かったんだけどね」

そう言って、また笑顔を見せる菅原くん。とくんと音をたてた胸に心地良い痛みが走る。話す度、笑顔を向けられる度、視線が合う度。色んなタイミングで、ありえないと分かっていたけれど、私は段々と自惚れていってしまっていた。

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