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最初のお菓子のやり取りは、忘れもしない中学3年生の時だった。中3の2月と言えど、俺もAも高校は私立の青城に決まっていて、遊び呆けても大丈夫な時期だった。
3年前のバレンタインはまさにその折。
同じクラスで、そこそこ仲の良かった女子。その程度の関係だったA――当時の呼び方で言うならば、柄井――が、真っ赤な顔をして、不器用にラッピングされたチョコレートを俺にくれたのだ。
「花巻、これ……義理だから!義理!」
そう、"義理"を主張する彼女から受け取ったチョコレートの包装はどう見ても本命で。そのちぐはぐな態度が俺の心にキュンと矢を刺したんだと思う。
「柄井お前真っ赤だし! 勝手に本命って思っとくわー」
「義理だっつーのバカ巻!」
「まぁ、ありがとな」
必死に俺に反論するAの頬は真っ赤で、彼女が俺に抱く感情はモロバレだった。中坊なりに精一杯恋愛していたんだなぁと、オッサン臭いことを考える自分に、我知らず苦笑する。
あの時、彼女がくれた手作りの生チョコは、やたらベチョベチョしてたっけ。不器用な彼女なりの最大限だったんだろう。甘ったるくて、でも美味しかったのを覚えてる。
「……懐かしいなぁ、」
つい、声が漏れた。
あれがもう3年前のことになるのかと、時の流れる早さを痛感する。光陰矢の如しとはよく言ったもので、俺はもうすぐ大学生だ。
そんなことがあって、俺もAのことが気になり始めたんだっけか、と思考を再び3年前に巡らせる。今のこの温度のない関係とのギャップに、少し悲しくなったのは否定出来なかった。
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作者名:ひな | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd
作成日時:2017年3月14日 23時