検索窓
今日:9 hit、昨日:0 hit、合計:42,254 hit

01 ページ1






ひと月前、彼女がくれたのは市販のチョコレートだった。

俺が甘ったるいものが好きだということは、俺達の中ではもう当たり前。そして俺とは対照的に、彼女は甘ったるいものよりも少し苦いビターチョコや抹茶の方が好きだということも、また当たり前だった。


「――今年、手作りじゃなくてごめん」


受け取りながら聞いた、彼女のそんな言葉を思い出す。しょうがない。俺は推薦で大学が決まっていたけれど、彼女は一般で。彼女の勉強漬けの毎日に、手作りチョコを作る余裕が無いのは分かっていたから、俺も文句は言わなかったし、言えなかった。多分その間、俯いていた彼女とは、視線が一度も合わなかったと思う。

渡された甘い甘いチョコは、毎年不器用ながら頑張って手作りしてくれていたチョコよりも、うんと質はいいはずなのに、何かが物足りない。本命チョコだと知っているのに、どこか"空っぽ"。まるで"義理"のような、言い知れぬ虚ろさごと、甘ったるいチョコレートを飲み込んだ。



――つい最近の、ほろ苦い記憶だ。

02→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (140 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
52人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ひな | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd  
作成日時:2017年3月14日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。