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ひと月前、彼女がくれたのは市販のチョコレートだった。
俺が甘ったるいものが好きだということは、俺達の中ではもう当たり前。そして俺とは対照的に、彼女は甘ったるいものよりも少し苦いビターチョコや抹茶の方が好きだということも、また当たり前だった。
「――今年、手作りじゃなくてごめん」
受け取りながら聞いた、彼女のそんな言葉を思い出す。しょうがない。俺は推薦で大学が決まっていたけれど、彼女は一般で。彼女の勉強漬けの毎日に、手作りチョコを作る余裕が無いのは分かっていたから、俺も文句は言わなかったし、言えなかった。多分その間、俯いていた彼女とは、視線が一度も合わなかったと思う。
渡された甘い甘いチョコは、毎年不器用ながら頑張って手作りしてくれていたチョコよりも、うんと質はいいはずなのに、何かが物足りない。本命チョコだと知っているのに、どこか"空っぽ"。まるで"義理"のような、言い知れぬ虚ろさごと、甘ったるいチョコレートを飲み込んだ。
――つい最近の、ほろ苦い記憶だ。
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作者名:ひな | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd
作成日時:2017年3月14日 23時