忘れな草の恋 10

10-08 頼まれ事 ページ8

■ RiKu ■

俺は今、結構怒っている。

あの時約束したはずだ。これからは一人で抱え込まずに言い合おうって。

なのにAのやつ…何で言わないんだよ。

俺にバレないとでも思ってんのか。何年一緒にいると思ってんだ。

嘘ではないかも知れないが、おかしいだろ？

お前なら礼のﾒｰﾙくらい昨日の内に送ってるだろうと思うし、変に隠すくらいだから余程の事があったんだろ。

その前にまさかSJと同じ家だったとは。

韓国のｱｲﾄﾞﾙはﾒﾝﾊﾞｰ同士で一緒に住む事が多いと聞いたが、良い所に住んでるよな。一社員の俺とは大違いだ。

いや、そんな事はどうでもいい。

俺はさ、A。お前の家族に頼まれてるんだからな？

韓国に来る前にAの実家に行った時だ。

お前が風呂に入っている時に両親に呼び出されて――

―――

『ﾘｯくん、Aは知っての通り人とずれてるから韓国に行ったらよろしく頼むな』

『心配し過ぎだよ。行き来するだけだよ？』

俺が安心するように言っても、時人さんはぎこちない笑顔を見せるだけだった。

『あの子の場合はいくら心配してもし足りへんのよ』

いつもはﾆｺﾆｺしている紅ちゃんも、いつになく真剣な表情だった。

『あの子は人を疑わへん子やから、ﾘｯくんが代わりに見定めてな？』

Aの家族は本当に心配性だ。

あいつは抜け過ぎているから心配になるのは分かるけど、少し度が過ぎている気もする。

『いつも思うけど、何でそんなに心配するのか聞いてもいい？』

『親が子を心配するのは当然やろう？』

ーーー


親の気持ちはまだ俺には分からないが、そういうもんなんだろう。

時人さんは俺にも気をつけてと言ってくれ、紅ちゃんは、俺を私達の子供みたいなものだからと言ってくれた。

その時に頭を撫でてくれたが、俺が二人に頭を撫でられたのはそれが初めてだった。

“親”という存在に頭を撫でられたのは何年ぶりだろう…。

その後、よろしくお願いしますと丁寧に頭を下げられた。

でも、この話をAには言わないで欲しいと頼まれた事は妙に引っ掛かった。

とにかく、お願いされたのに何かあったじゃ済まないんだよ。

その…ｳﾆｮｸくんだっけ？どんな子なのか見定めないと。

とりあえずその子の事は置いといて、話さない気なら俺だって最終手段に出てやる。

携帯を手に持って電話を掛ける。

誰に…って？それはもちろんｲﾁ兄だ。

たまには俺以外の人にも叱られなさい。

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