Time goes by

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神山は、継父に、
狭くて閉鎖的なあの街に縛り付けられとった。


「またいつか、このバンドが活動再開したら、
その時は一緒に行こうや」


こんな不確かなもんやなくて。


すぐに叶う、確約が欲しい。


「・・・約束はいらん」


こっちを向いた神山の目が少し潤んで見えた。


神山の泣いてる顔、見たことないのに。


けど、いつも、泣き顔みたいに辛そうな表情。


笑って欲しい。


俺が笑顔にさせたい。


「神山の猫の髭、また見せてや」


頬に触れようとして、顔、背けられた。


高校ん時は、好きって自覚なかったくせに。


二人で絵を描いてる時、何度も何度も思ってた。


触れたい、キスしたい。


頭の中は、そればっかりで・・・


それ知ったら、神山、どんな顔する？


今も、おんなじ。


違うのは、

この感情の名前をはっきり知ってるってことだけ。


「神山、前より可愛いなったな。
ピアス、似合うてる」


ほんまは、
誕生日に似合いそうなん、プレゼントしたかってんけど。


先輩らと相談して、

結局、ゲームソフトになってしもた。


「・・・チャラ」


「正直に言うただけやん。
ほんまに、真っ白やな・・・」


神山、膝を抱えて、顔をうずめた。


「見んといてや」


俺の好きな絵を描く、
真っ白い手が、

すぐそばにある。


触れたい。

衝動を抑え切れそうにない。


手を伸ばす。


後少し、もう少し。


微かに触れた、その時。


「神ちゃん！呼んでんのに、はよ来てやあ」


明るい声がして、
顔を挙げると、

こっちに向かって一目散に駆けてくる、しげの姿。


笑顔やけど、焦ってんの、まる分かり。


俺に嫉妬してる？


「海は行かへん言うたのに」


「ええやん。
ちょっとだけ。
水着、着てるやろ？」


「一応、下には。でも・・・」


「泳がれへんの？」


「そんなことないって」


「なら行こ」


しげが強引に神山の手を引いて、
立ち上がらせた。


繋がってたイヤホンも、
あっさりと外れてしもた。


胸に鋭い痛みが走る。


神山、泳がれへんのに・・・


「しげ、無理強いすんなや。
嫌がってるやん」


思わず引き止めてた。


神山が少し驚いた顔して、
俺を振り返る。


「ごめん、神ちゃん、嫌やった？」

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