Time goes by

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なんか知らんけど、
俺には、やたらめったら優しい、いうか、甘い。


他の美術予備校のクラスメイトに対しては、
うざくはあるものの、まあ普通の範囲内やし、

俺にだけ特別なように思う。


どう接してええんか、
出会って数ヶ月経っても、いまだ戸惑うねんけど、

居心地は悪くない。


構えずに、素の自分でおれる、初めての男友達。


育ってきた環境、真逆やのにな。


しげは、俺の持ってないもん、

いわゆる、


『普通』を、


全部持ってる。


幼い俺が、どんだけ足掻いても届かへんかった。


俺の憧れを具現化したみたいな存在。


ほんまなら、

コンプレックス刺激されて、遠ざけたなるはずやのに、

なんでか、しげとおると不思議と落ち着くねん。


高校までの俺は、

誰にも心開かず、肩肘張って生きてた。


過去を捨てて、嘘で塗り固めてる、今の俺も偽物。


ほんまもんの自分って何なんやろ。


何重にも纏った鎧に隠された、

俺のナカミってやつ。


８才のあの日から、ずっと行方不明やったのに。

最近、不意に顔を出す時がある。







二人でスーパーに寄って、

食材を調達してから、

しげが居候してる、叔母さんの家は、

郊外のこぢんまりした一戸建て。


叔母さんは、
しげのお母さんのお姉さん。

結婚が遅かったとかで子供おらんねんて。


それで、甥っ子のしげを猫っ可愛がりしてはるんやて。



キッチンに、男二人並ぶと、ちょい窮屈。


しげの花柄エプロンはなかなかシュールや。


正直言うと、わらける。


「神ちゃん、おばちゃんのエプロン似合うなあ」
　

なぜか、嬉しそうに、ニタニタしてる、こいつ。


「しげのエプロン姿は強烈やな」


「ブス言わんとってやあ」


「ブスとは言うてへんやん。
まあ、ブスやけど」


「ひど！神ちゃん、笑い過ぎやで！」


「まじで笑けるねんもん」


爆笑しつつ、

しげは、ニラ豚炒めしか出来へんらしくて、
それに専念。


結局、オムライスは俺が作った。


向かい合わせのダイニングテーブル。

友達ってか、家族みたいな。


「頂きまあす！」


それを豪快に頬張った後、しげ、にこにこになった。


「神ちゃん！天才ちゃうん！」

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