恋に効かない時間グスリ【Hirano.S】 (ページ10)

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わすれられない ▲ ページ10

紫耀side

「しょう？荷物片付けた？終わったならりくのも手伝ってあげてね？」

高校2年の秋。

母親の仕事の都合で
中学に入る手前まで住んでいた名古屋市の前とは違う区へ引っ越すことになった。

中学に入る時も、
母親の仕事の都合で同じように東京へ転校して
中学生活と高校受験も終えて
このまま東京で暮らしていくんだろうと思っていた矢先のことで…

「りく～終わった～？」

名古屋へ行く前日、
弟・りくの部屋を覗くと
まだ全然出来てない支度に

「お前この数日何やってたんだよ」

「にいちゃんみたいに荷物少なくないんだよ、俺は」

呆れながらも
ママ(って言わなきゃ怒られる)に言われた通り
りくの荷物を片付けてやる。

カラーボックスを漁ると、
これ俺のだろ！いつの間に持って行ったんだよ
って言いたくなるくらいに
俺が見覚えのあるものがゴロゴロ出てきて、

「あ…」

その中に、なぜか俺の運動会の写真が紛れ込んでいて…

「なんでこれりくがもってんの？」

「しらない、ママが間違えたんじゃない？にいちゃん持っていってよ」

俺の手元の写真を覗き込んだりくは首をかしげる。

小学六年生の運動会の写真
ハチマキを首に巻いて思いっきり笑う俺の横に写るのは

当時好きだった女の子。

東京へ引っ越すことが決まった時、
お別れになると言ったら泣いちゃう気がして
なかなか言い出せず、
結局何も言わないまま名古屋を去ってしまって

以来、どこに行ったかなんて分からない…。

中学に上がって、
東京の友達はなんかすごく大人に見えて
周りにつられて何人かの女の子と付き合ってみたりしたけど

その度に何故かこの子との思い出が浮かんで、

あの子だったらこう言いそうとか
あの子だったらこうやって笑うよなとか

いちいち出てくるから
目の前の彼女のことが見えなくなって

結局誰とも長続きしなかった。

俺はまだあの子が好きなのか？

それもよく分からない。

名古屋へ戻ることになったけど、
前とは違う場所。

きっとこの子に逢える日は来ないんだろうけど
これから先もずっとこの子のことを忘れられないのかな…って

そんな風に思いながら
写真を自分の荷物の中へしまった。