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結果、定期テスト後の返却で見事に化学で100点を取った私はちょっとだけ松村先生にドヤ顔をしてしまった。
当の本人はメガネと重い前髪であんまり表情は見えなかった。

今回は頑張ったから学年でも10位以内には入ったし、過去最高点を叩き出した。私としても満足で、そのままバイトがあったからバイト先に向かった。
「満点取ったね」
バイトで品出しをしてる時声をかけられて振り返ると、約束事をした松村先生が立っていた。
「取れました」
「俺がメガネかけてる理由教えてあげるから、」
明日放課後準備室おいで。そう言って先生はお店を出ていった。


次の日、言われた通り放課後準備室に行くとメガネをかけた松村先生が待っていた。そこ座って、と理科室の角椅子がひとつ置いてあって、失礼します。と座ると、先生は向かいの椅子に座った。どこから話そうかなとメガネを外して髪をガシガシ掻いてるのは初めて見た。

「簡潔に言うと自分に自信がないの。俺には兄貴がいて、俺が小学生の頃に死んだんだ。死んだ兄貴に俺はよく似てて、よく父さんから、兄貴はできたのにお前は出来ないんだなって。そう言われてきたから、自分は兄貴に劣るんだって、教えこまれてるみたいでさ。比べられたくなくて、メガネして、髪も伸ばしたんだ」
子供っぽいでしょう?そういう松村先生は手に持ったメガネのつるを弄りながら言った。

可哀想なんて気持ちより、お父さんはどこ見てるんだろうと思った。
「先生は、先生ですよね。お兄さんとは違うじゃないですか。私は先生のお兄さんにも、お父さんにも会ったことないですけど、先生は先生だけです。丁寧に教えてくれて、約束守ってくれるのは松村先生だけですよ」
思ったことをそのまま言えば、松村先生は重たい前髪の下で綺麗な二重の目を大きくして私を見た。
「松村先生は松村先生です。お兄さんとは違うし、この世界にひとりしかいないです」
続けてそう言うとぽろりと松村先生の目から涙がこぼれた。まさか泣くとは思わなくてカバンからハンカチを出すと先生は目元を自分で抑えてた。
「そっか、俺は俺しかいないよね。そうだよね」
「そうですよ」
「俺は、誰かに俺は俺しかいないって言われたかったのかも。あなたが言ってくれたから、」

ありがとうってまた綺麗な笑顔を見せてきた。

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曽根崎(プロフ) - お餅さん» コメントありがとうございます!お楽しみいただけて何よりです☺️ (11月4日 19時) (レス) @page11 id: 8bc1808701 (このIDを非表示/違反報告)
お餅(プロフ) - 初めまして。S T 箱推しですぐさまこのお話をタップしてしまいました😎とても面白かったです (11月4日 16時) (レス) @page11 id: b527515d65 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:曽根崎 | 作成日時:2023年11月4日 12時

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