松野家六つ子…本日＿【人外松】 (ページ2)

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★一松
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「うわぁぁぁぁあぁ⁉⁉」

遠ざかっていく地面と、背中を引っ張られる感覚と、たった今自分が空から落とされる(・・・・・)かもしれないという恐怖。
自分が状況を冷静に考えている事にも驚いて。

俺は死を覚悟した。

＿＿遡る事数時間前…

いつものように路地裏に住み着いた野良猫達に会いに行っていた時の事だった。今日は朝から曇りで、今にも降り始めそうな雰囲気を醸し出していた。

猫も雨の匂いが分かってるんだろう。置いてあった、ビール瓶を入れるカゴの中や大きいゴミの陰に隠れている。勿論ゴミは不法投棄のもの。衛生面的にも悪いのは当たり前だけどそれでも猫たちはそこを拠点として生きていた。

「…っよし、あとこいつで最後…」

俺が置いた猫缶の中身を食べた後避難していく猫達を見ながら、さて俺もそろそろ家に戻ろうかと立ち上がった時だった。

突然の轟音。
直後、俺の背中を襲う衝撃。

「え」

それは物凄い勢いを持った風だった。
その風力に耐え切れずよろけた時既に、俺は路地裏から何ｍか離れた場所に浮いていた。気が付いたら俺は宙に。視界に映るはコンクリートの地面。

脳の処理が追い付かず頭が真っ白になる。

「…ﾊｯ！」

我に返り状況を把握しようと脳を働かす。
多分、今俺は何か凄く大きな生き物(明らかに鳥じゃない)に背中を掴まれてる。パーカー越しの少し尖った感触と地面に映った大きな黒い影で、それだけは分かった。

でも掴まれているのが背中だから死角になっていてその何か自体は見えない。それを理解すると同時に、やっと遅れて喉が動いた。悲鳴が口から飛び出る。

…で、冒頭に戻る。

俺は高い所が苦手だ。猫みたいだと言われる俺だけど、あいつらは安全を確保できるからとか諸々の理由で高い所に上るのが好きなだけだ。いくら似ていると言われても人間の高い所を嫌う本能には抗えない。

…高いとかの次元じゃない。
どんどん、さっきいた路地裏があるビル群が小さくなっていく。
落ちたら助かる高さじゃない!!そう確信すると吐き気が込み上げてきた。

俺の背中を掴む得体の知れないものに対しての恐怖も相まって気絶しそうになる。すると耳にゴロゴロゴロ、と。雷が鳴る前兆のようなそんな音が入って来た。

そういやテレビで、雷には金属製のものじゃなくて、木とか高いもの…つまり雷雲への距離が近いものに落ちる習性があったことを思い出した。
一つ死への可能性が増えて俺は戦慄した。