第1章 “ 鬼 ” の個性 ページ1
『 鬼の個性だってー…、嫌な個性 』
ゴオォと、排水管に水が通る音がする。義姉は、心底楽しそうに笑う。
『あ、でも貴女にピッタリじゃない。だって、鬼には友達はいない、家族はない、家もない…、ほら、』
パチンッと、水の弾ける音。
『 貴女の居場所なんて、この世の何処にもないじゃない 』
また、同じ夢を見ていた。ベッドの中で、ぼんやりと夢のおさらいをする。遮光カーテンの隙間から溢れるように、光が差し込んでいる。眠気覚ましに、窓を開けると、川の匂いとともに柔らかい春の日差しが私を包む。
壁に掛けてあるブレザーは、しっかりとした生地。ブラウスのひんやりとした温度に、徐々に目が覚める。
《 今日は、いい選択日和でしょう 》
洗濯物を干しると、アナウンサーが快活に報道する。その言葉にホッとしながら、分厚いマットを干し、マンションを出る。
外は澄んだ青空で、飛行機雲が薄く伸びている。前髪にかかりそうになる桜の花弁を避けながら、川面を歩いた。川はいつ見ても飽きない。春夏秋冬、変わることなく色んな表情を見せてくれる。
この川は、何処に繋がってるんだろう。
雄英高校の川まで、繋がってるのかな。
雄英高校、毎年300の倍率を超えるヒーロー科は雄英高校の特徴。でも、私は普通科を選んだ。何故なら、鬼にヒーローは向いてないから。義父にそれを言うと、凄く不満そうにしてたけど。中学の時とは倍の大きさの体育館に入り、ネズミが校長先生など驚きの連続だった。
廊下を出れば、人、人、人……。人混みの多さにウエッとなりながらも、何とか自分の教室まで歩いた。
担任の先生が入ってきて、簡単な自己紹介が始まった。私の隣の席の男の子は、心操人使くん。
「 じゃ、隣の席と奴とは簡単な挨拶しろよー 」
その発言にビックリして、心操くんの方向をゆっくりと向く。人見知りの私にとっては、これは難題。
声を出そうと思っても、金魚みたいに口をパクパクしてしまう。
「落ち着けよ 」
「……うん 」
机に肘をついて、観察するように、じっと私の顔を見つめる心操くん。春の風が、強く始まりを告げるように吹いた。
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作者名：チキンカツ | 作成日時：2018年6月3日 13時
