癒えない傷 ページ10
竹谷side
大切な人がいるから、優しい香りが自然とする。子供を持つ母親と同じという言葉に、小さかった頃の記憶が走馬灯のように蘇った。確かに、この人の香りは母親と同じように、包み込むような優しい香りがした。
「 ジュンコちゃんは、竹谷くんのなんだね。」
ジュンコの体に触れようとする。その触れ方に不安を覚えて、慌てて手首を掴んで制する。驚いたように、真っ黒な瞳が俺に向く。その瞳には、焦った俺が映っていた。
「 ジュンコは俺のペットじゃないし、この蛇は伊賀崎孫兵って奴のなんだ。」
びっくりするほどの冷たい手に、足の裏が震えた。本当に、こいつは天女か？ 今まで触れた天女の、ううん、女の肌の中で一番冷たくて、危うく感じる白さを持っていた。
「 ジュンコ、孫兵の所に帰ろう。」
ジュンコは名残惜しそうに、彼女から離れた。彼女の腕につたいながら、最後に爪に尻尾を置いた。桜貝のような綺麗な爪には、穢れなんて一切感じさせない。
「 ジュンコちゃんって、……オス？ 」
「 メスです。」
そう教えると、クイズに外れたというような惜しそうな顔をした。ころころと表情が変わる人。駄目だ、こっちのペースが崩されそうになる。小松田さんを見ても、ただ見守るだけ。
空を見上げて、あっー！！と何かを思い出したような声を上げた。
「 掃除に戻らなきゃ！！ Aちゃんも、夕飯の下ごしらえがあるんじゃない？ 」
「 ……っ！！ 」
口元に手を当てて、二人で慌ててる。何なんだ、母性を感じさせたり、小松田さんと同じくらいうっかりしてるぞ。
「 あっ、どうしよう？ 」
「 走らなくちゃ、Aちゃんは火の扱いの勉強中でしょ？ 」
ピュッーと風のように素早く去っていく。駄目だ、あんな小松田さんと同じくらいのドジな、読めない人に天女なんて言葉を使っていいのか迷う。
「 天女なんて言葉は似合わんな。」
「 三郎…って、全員いるんだろ？ 」
「 なーんだ、バレてたか。しっかし、天女なんて人違いな言葉をかけてたなぁ、八左ヱ門？ 」
「 勘右衛門だって、勘違いしてたくせに。」
そう言い返すと、兵助が横目で俺を睨む。
「 ペースが崩されてただろ？ 」
兵助は、じっと何処か一点を見つめ出した。
「 ……たとえ、どんな奴であっても。あの頃の傷はなかなか癒えないんだよ。」
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チョコパイ - 続き気になる、更新待ってます! (2021年4月28日 4時) (
レス) id: 451b0d7f40 (このIDを非表示/違反報告)
あみん(プロフ) - とても面白いです！！読みやすいし！！！応援しています！！ (2021年1月5日 12時) (レス) id: ace2dffc29 (このIDを非表示/違反報告)
NARUTOKUN(プロフ) - ふうちゃんさん» いいえっ、いくらでも感想下さい笑笑。私の元気の源はですよー！！ (2018年12月25日 23時) (レス) id: 371427a5bb (このIDを非表示/違反報告)
ふうちゃん - なんかコメント多くてすみません！伊作くんとのハッピーエンド楽しみにしてます、これからも頑張ってください！ (2018年12月20日 20時) (レス) id: bc1f7a9f27 (このIDを非表示/違反報告)
チキンカツ - ふうちゃんさん» コメント、何回もして下さってありがとうございますっ。精一杯最後まで書ききって伊作と幸せ者にしてあげたいです！！ (2018年12月2日 0時) (レス) id: 4c755f6345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チキンカツ x他1人 | 作成日時：2018年11月3日 23時
