保健委員長の歪み ページ4
伊作side
Aは、天女様なんかじゃない。出会ったときから、理解していた。この時代に舞い降りて、傷を負っていた。止むを得ず、医務室で手当てをしようとし、服を脱がせたときに度肝を抜いた。あの新野先生さえ、後ずさる。
「 これは、酷い……。」
真っ白な雪のような肌を犯す、果実を握りつぶしたかのような色をした火傷の痕が、半身を覆っていた。傷痕を縫ったあとは、痛々しく目を逸らしたくなる。夕闇に包まれ、白い光が部屋に入り、彼女の白い陶器のような頬を染めあげた。
目を覚ました彼女は、僕の話を聞くと布団に伏せて静かに泣き出した。
「 ……あの、天女様、」
「 天女様なんて呼べる体？ 」
小さな声で悲痛な叫びが、保健室に響いた。
「 ……如何して此処へ来たか、わかってますか？」
「 自 殺をしたから…、自ら命を投げだしたから。」
よく見ると、今までの天女とは程遠い顔をしているのに気づいたのと同時に、静かな怒りも込み上げた。
「 ______へぇ、そうなんだ。命の大切さを、知らないんだね。」
自分でも驚くくらいの、鋭利な声。
「 ……えぇ、知っていたら大切な人を失うことも、呪いのような火傷も負わなかった。」
呪いのような火傷、そうだ、なぜ火傷を。
「 好きな人を、亡くしたんですか？ 」
「 ……。」
「 だから、わざわざ身を投げたんですか？ 」
同情を誘うような手口だ。前の天女たちも同じような手口を使っていたから。泳がせたんだ、絶対に嘘だと思って。そして、それはあっさりと崩れ去った。一ヶ月経ったある日のこと、馬借の清八さんが、小松田さんに案内されて食堂にやってきたのだ。
「 あのっ、初めて会ったときから好きでしたっ。」
「 お付き合いして下さいっ！！ 」
彼女の瞳が、ゆっくりと見開かれた。そっと、目を逸らして火傷の痕を掻きだした。
「 ごめんなさい。」
「 誰か他に好きな人でも？ 此処の忍たまの子ですか？ 」
「 まさかっ、私は十八歳ですよ？ 」
彼女はパッと顔を上げて、眉を下げて泣きそうな顔をした。
「 …好きな人がいるんです。」
小さな声で呟かれた言葉は、食堂に小さく響いた。そして、何故か僕の心がザワザワと蠢いて、舌の裏がザラリとしたのがわかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チョコパイ - 続き気になる、更新待ってます! (2021年4月28日 4時) (
レス) id: 451b0d7f40 (このIDを非表示/違反報告)
あみん(プロフ) - とても面白いです！！読みやすいし！！！応援しています！！ (2021年1月5日 12時) (レス) id: ace2dffc29 (このIDを非表示/違反報告)
NARUTOKUN(プロフ) - ふうちゃんさん» いいえっ、いくらでも感想下さい笑笑。私の元気の源はですよー！！ (2018年12月25日 23時) (レス) id: 371427a5bb (このIDを非表示/違反報告)
ふうちゃん - なんかコメント多くてすみません！伊作くんとのハッピーエンド楽しみにしてます、これからも頑張ってください！ (2018年12月20日 20時) (レス) id: bc1f7a9f27 (このIDを非表示/違反報告)
チキンカツ - ふうちゃんさん» コメント、何回もして下さってありがとうございますっ。精一杯最後まで書ききって伊作と幸せ者にしてあげたいです！！ (2018年12月2日 0時) (レス) id: 4c755f6345 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：チキンカツ x他1人 | 作成日時：2018年11月3日 23時
