罪悪感 ページ21
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翌朝、食堂へ行くとおばちゃんにびっくりされた。
「 んまぁっ、瞼がぱんぱんに腫れてるわよ!? ちょっと来なさいっ。」
水で濡らされた布巾を、瞼の上に置かれた。
「 しばらくそうしてて。じゃないと、腫れが引かないから。」
今日は手伝わなくていいからと言われ、椅子に座らされた。
「 迷惑かけてすみません…。」
昨日、あのまま寝てしまった。朝、目を覚ますと伊作くんはもう何処にもいなかったのだ。
伊作くんに抱きしめられた感触が、まだ体から離れない。
トントンと野菜を切られる音を聞きながら、またうとうとしてしまう。布巾を取り、おばちゃんの姿を見る。料理を作るその姿が、お母さんと重なった。
私が事故にあった次の日、顔面蒼白で病室に駆け込み、意識不明の重体の私を見て、半狂乱陥った。
火傷と傷跡は一生残ると言われたら、泣き叫んだらしい。お母さんは、何でこんなことに、ごめんなさいと言い、目が覚めた私を強く抱き締めた。罪悪感が、胸に募る。
「 あの、やっぱり手伝わせて下さい。」
「 だめよ、Aちゃん。あなた、顔色が悪いし…。何かあったの? 」
「 ……いいえ、何も。」
火傷の跡が痒くなって、肩を掻く。
「 少し、この時代に堕ちる前のことを思い出して。それだけです。」
顔色が悪いと言われたって、あの人を失ってからずっとそうだ。生気がない、落ち込んでいる。誰からも言われ続けた。
もう、どんな言葉だって響かなかった。
野菜の皮を切り、袋の中に詰めていく。生物委員会のためだ。食堂の裏まで持っていくと、茶色の土の上に、鮮やかな赤色の鱗。
「 おはよう、ジュンコちゃん。」
「 シュー…。」
スルスルと近寄り、腕を伸ばすと柔らかく滑らかに私の腕に絡みつく。首を傾けて私を見つめるその姿は、美しい。
「 シュ、シュー? 」
「 元気がないけど、体は元気なの。食堂はもういいからって言われたから、ヘムヘムちゃんの所に行こうかな。」
仕事は何も食堂だけじゃない、歩き出そうとした。
すると、がさりと落ち葉を踏む音がした。
「 ジュンコを返せっ。」
「 ……きみは? 」
「 三年い組、伊賀崎孫兵だっ!! 竹谷先輩の言う通り、ジュンコがあんたのところにっ!! 」
ジュンコちゃんは、孫兵くんを拒否するように、私の肩へと擦り寄っていく。伊賀崎くんの目に、何かのスイッチが入ったように見えた。
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チョコパイ - 続き気になる、更新待ってます! (2021年4月28日 4時) (レス) id: 451b0d7f40 (このIDを非表示/違反報告)
あみん(プロフ) - とても面白いです!!読みやすいし!!!応援しています!! (2021年1月5日 12時) (レス) id: ace2dffc29 (このIDを非表示/違反報告)
NARUTOKUN(プロフ) - ふうちゃんさん» いいえっ、いくらでも感想下さい笑笑。私の元気の源はですよー!! (2018年12月25日 23時) (レス) id: 371427a5bb (このIDを非表示/違反報告)
ふうちゃん - なんかコメント多くてすみません!伊作くんとのハッピーエンド楽しみにしてます、これからも頑張ってください! (2018年12月20日 20時) (レス) id: bc1f7a9f27 (このIDを非表示/違反報告)
チキンカツ - ふうちゃんさん» コメント、何回もして下さってありがとうございますっ。精一杯最後まで書ききって伊作と幸せ者にしてあげたいです!! (2018年12月2日 0時) (レス) id: 4c755f6345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チキンカツ x他1人 | 作成日時:2018年11月3日 23時