天女の愛しい人 ページ3
.
ひらり、ひらひらと舞い落ちる葉っぱを頭の上に乗せてるヘムヘムちゃん。笑いながら、葉っぱを取ってあげると、ヘムヘムちゃん照れ笑い。
「 新緑の季節ね、ヘムヘムちゃん。」
「 ヘムヘムー!! 」
ヘムヘムちゃんは犬らしく、鳴き声をあげながら手をあげる。可愛い肉球が見えた。それを握りながら、飼っていたシロを思い出す。優しく、思いやりのある犬のシロ。神様に連れていかれて、もう二度とあの温もりは味わえないと思っていたのに。
「 お掃除終わったね、じゃあね。」
「 ヘム? 」
「 事務員のお手伝いに行くの。」
名残惜しそうにしてくれるヘムヘムちゃん。あぁ、シロもこんな顔をしてくれていた。そして、ハッとする。駄目だ駄目だ、シロとヘムヘムちゃんを重ねては。
「 …また、後でね。」
後ろ髪を引かれる思いで、事務室まで急ぐと、廊下で大量の書類を運ぶ小松田さんを見つけた。
「 あっ、Aちゃーん!! よければ半分持ってー。」
「 はーーい。」
小松田さんの事務のお手伝いをするのも、なかなか大変だった。クラス分のプリントをまとめたり、棚に入れたり。アルバイトみたいな感じだった。終わったら、もう一度食堂に戻って夕飯の下ごしらえ。急げ、急げと思いながら、食堂に行くと最近になって見慣れた人がいた。
「 あれ、清八さん? 」
清八さんは会釈をして、私の顔を見つめたまま黙り込んでしまう。思わずおばちゃんを見ても、怪訝そうな顔をするだけ。
「 初めて会ったときから、ずっと好きでしたっ。」
「 俺と付き合って下さいっ!! 」
突然の告白に一瞬頭がフリーズして、何秒間か経った後、ハッとした。好き? 清八さんが私を? 何で…? なんて考えは出ずに、息を吐くのと同じ自然現象のように言葉が出た。
「 ごめんなさい。」
清八さんが諦めきれなさそうに、眉間に皺を寄せ私に詰め寄る。天真爛漫で、笑顔の清八さんのこんな顔を初めてみた。
「 誰か他に好きな人でも? 此処の忍たまの子達ですか? 」
「 まさかっ、私は十八歳ですよ? 」
あぁ、こんな時に傷痕が鈍く痒くなる。ドクンッと波がやれるように心がざわめく。私の好きな人は、あの人だけだ。
「 ……好きな人がいるんです。」
ずっと、忘れられない。
.
121人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チョコパイ - 続き気になる、更新待ってます! (2021年4月28日 4時) (レス) id: 451b0d7f40 (このIDを非表示/違反報告)
あみん(プロフ) - とても面白いです!!読みやすいし!!!応援しています!! (2021年1月5日 12時) (レス) id: ace2dffc29 (このIDを非表示/違反報告)
NARUTOKUN(プロフ) - ふうちゃんさん» いいえっ、いくらでも感想下さい笑笑。私の元気の源はですよー!! (2018年12月25日 23時) (レス) id: 371427a5bb (このIDを非表示/違反報告)
ふうちゃん - なんかコメント多くてすみません!伊作くんとのハッピーエンド楽しみにしてます、これからも頑張ってください! (2018年12月20日 20時) (レス) id: bc1f7a9f27 (このIDを非表示/違反報告)
チキンカツ - ふうちゃんさん» コメント、何回もして下さってありがとうございますっ。精一杯最後まで書ききって伊作と幸せ者にしてあげたいです!! (2018年12月2日 0時) (レス) id: 4c755f6345 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:チキンカツ x他1人 | 作成日時:2018年11月3日 23時