優しいぬくもり ページ17
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「 さっきから、いいや会った時からずっーと無表情だ。どこか痛いのか? 」
「 ……その、知り合いの人に迷惑をかけてるなって自己嫌悪です。」
ざわざわと騒めく煩さを実感しながら、自己嫌悪という言葉を吐き出した。
「 人見知りで、誰と何をどう話せばいいか、さっぱり分からないんです。」
「 新しい場所でも、そのせいで浮いてて。」
浮いている。その事実を口に出すと、改めてそうなんだと実感する。
「 じゃあ、ずっと独りなのか? 」
「 いえ、ずっと独りじゃないです。」
伊作くんがいてくれたから。前にいた世界では、友達やあの人が助けてくれたから。じゃあ、この時代では……。
「 ……伊作くんがいてくれるから、私は大丈夫なんだ。」
「 そう思うんなら、僕の足音だけで僕だと気付いて。」
聞き慣れた声に顔を上げると、伊作くんが眉を下げて口元は怒りながら、私の腕を掴んだ。
「 心配したんだよっ? 伏木蔵が気づかなかったら、きみが何処で迷子になったさえ分からなかったんだから。」
「 ごめんなさい。」
頭を下げると、ため息が聞こえて、行くよと声を掛けられた。お爺さんの方を振り向くと、少し寂しそうな顔をしていた。
「 あの、また来てもいいですか? 」
「 じゃあ、約束だ。」
手を伸ばして握ると、お爺さんは驚いたように目を丸くして私の手を握り返した。
伊作くんたちの後を急いで追いつくと、ある薬草屋さんについた。薬草を売って、お金にして保健委員会の活動の資金にする。
「 何を買ったんですか…? 」
伏木蔵くんが小さな声で囁いた。
「 花瓶を買ったの。ありがとう、私がいないのに気付いてくれて。」
「 伊作先輩が、ずっと貴女の事を気にしていたんです。だから、自然に僕も気にしちゃって…。」
腰を下ろして、更にお話ししやすい体制を取った。
「 僕、Aさんのお薬を調合する練習してるんです。」
「 そうなの? 」
「 うふふ、伊作先輩直伝のお薬だから、病気だって治るはずですよ。」
伊作くんは、私の火傷の話をしていないらしく、伏木蔵くんは私が何らかの病気だと考えている。
「 ……やっぱり、Aさんはみんなが言う悪い人じゃないですね。優しいし、なんか…、お母さんみたいです。」
そのまま、すりっと擦り寄られて手を握られる。優しい暖かさが胸に広がった。
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チョコパイ - 続き気になる、更新待ってます! (2021年4月28日 4時) (レス) id: 451b0d7f40 (このIDを非表示/違反報告)
あみん(プロフ) - とても面白いです!!読みやすいし!!!応援しています!! (2021年1月5日 12時) (レス) id: ace2dffc29 (このIDを非表示/違反報告)
NARUTOKUN(プロフ) - ふうちゃんさん» いいえっ、いくらでも感想下さい笑笑。私の元気の源はですよー!! (2018年12月25日 23時) (レス) id: 371427a5bb (このIDを非表示/違反報告)
ふうちゃん - なんかコメント多くてすみません!伊作くんとのハッピーエンド楽しみにしてます、これからも頑張ってください! (2018年12月20日 20時) (レス) id: bc1f7a9f27 (このIDを非表示/違反報告)
チキンカツ - ふうちゃんさん» コメント、何回もして下さってありがとうございますっ。精一杯最後まで書ききって伊作と幸せ者にしてあげたいです!! (2018年12月2日 0時) (レス) id: 4c755f6345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チキンカツ x他1人 | 作成日時:2018年11月3日 23時