恩返しを ページ12
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温かい体温の優しさに、目から涙が溢れそうになる。急いで手から離れ、距離を置いた。
「 そんな顔をされても意味ないよ、顔に出てる。」
「 なんで、分かるんですか? 」
「 この職業柄、よく人の観察をする。きみほどの重症な人は久しぶりに見た。」
伊作くんも、私のことをこんな風に考えて、観察してたのかな。今も、もしかしたらこの会話を聞いているかもしれない。
「 今、周りには誰もいないよ。この時代に来たのにも、少し検討がついてるから何も言わない。でも、来た以上、逃げたら駄目だよ。」
すぐ顔にでると揶揄された。恥ずかしくて顔が真っ赤になると同時に次の言葉に驚いた。
「 此処で生きて、この時代で死ぬ。それが、命を投げ出した神様からの罰だろう? 」
「 ……。」
静かに諭され、胸が苦しくなった。自ら命を投げ出したことも、私が今もあの人を慕い続けてることを理解して、雑渡さんは喋っている。
「 悲しそうな顔をしてるから、つい口が塞がらなくてね。それと、保健委員長があまりに心配してるからね。」
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「 伊作くんとの約束を破ってごめんなさい。」
「 ……それ、今この状況で言うの? 」
闇の中に光を灯すように、火が付いている。ランプのように部屋の雰囲気を良くしてくれた。伊作くんは、無言で私の部屋に入り、包帯を変えるから服を脱いでくれた言ったのだ。
「 全く…。次はどうしようかな? 」
「 もうしないよ、絶対に。」
ぎゅっと肩の上で包帯が巻き終わる音がした。振り返り、伊作くんを見つめた。肌と肌が触れ合う距離。こんなに距離が近いと、伊作くんから薬草の匂いがした。
「 ちっ、近いよ? 」
「 大事な話をする時は、距離が近いのが大切なの。」
頬を赤らめる伊作くんを放っておき、じっと見つめると、彼も真剣に見つめ返してくれた。
「 私っ、伊作くんが困ってたら何だってする!! 」
「 えぇっ!? 」
「 助けてほしいときは、いつでも言って。雑用だって、委員会の仕事だって手伝う。」
「 どうしたの、何かあった? 」
「 伊作くんが、ずっと私を助けてくれたから。その恩返しがしたい。」
一生をかけてでも、貴方に恩返しがしたいんです。
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チョコパイ - 続き気になる、更新待ってます! (2021年4月28日 4時) (レス) id: 451b0d7f40 (このIDを非表示/違反報告)
あみん(プロフ) - とても面白いです!!読みやすいし!!!応援しています!! (2021年1月5日 12時) (レス) id: ace2dffc29 (このIDを非表示/違反報告)
NARUTOKUN(プロフ) - ふうちゃんさん» いいえっ、いくらでも感想下さい笑笑。私の元気の源はですよー!! (2018年12月25日 23時) (レス) id: 371427a5bb (このIDを非表示/違反報告)
ふうちゃん - なんかコメント多くてすみません!伊作くんとのハッピーエンド楽しみにしてます、これからも頑張ってください! (2018年12月20日 20時) (レス) id: bc1f7a9f27 (このIDを非表示/違反報告)
チキンカツ - ふうちゃんさん» コメント、何回もして下さってありがとうございますっ。精一杯最後まで書ききって伊作と幸せ者にしてあげたいです!! (2018年12月2日 0時) (レス) id: 4c755f6345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チキンカツ x他1人 | 作成日時:2018年11月3日 23時